フィリピンのバナナ農園労働者
弾圧するな
関連/スミフル本社前で連帯行動
スミフル(住友商事系)バナナ農園で
労組活動家の殺人事件が発生
日本でもっとも食べられている果物、バナナ。2004年以降、年間消費量はりんご、みかんを抑え堂々の第1位で、ここ20年ほどは毎年約100万トンものバナナが輸入されています。その8割はフィリピン産。なかでも日本向けフィリピンバナナの大部分は、南部のミンダナオ島で生産されています。
10月末、このミンダナオ島のバナナ農園で働く労働者が、4発の銃弾を浴び、殺害されるという事件が起きました。
殺害されたダニー・ボーイ・バウティスタさんはまだ31歳。日本最大のバナナブランド「スミフル」の系列農園で働く労働者900人を組織する「スヤパ農園労働組合」の精力的な活動家で、10月1日以降、正規雇用を求めて900人が参加する大規模なストライキをたたかっていた矢先の出来事でした。
スヤパ農園労働組合はフィリピン労働雇用省にも認定されている正規の労働組合ですが、スミフルは団体交渉を拒否。さらにストライキ中には、フィリピン国軍と国家警察、そして雇われ暴力集団が一体となってストライキ・キャンプを襲撃し、27人もの負傷者を出す暴力的排除も行われています。バウティスタさん殺害の犯人もまだ判明すらしていません。
「スミフル」は旧社名を「住商フルーツ」といい、日本の巨大商社「住友商事」が展開するバナナブランドの事業会社です。「住友商事」のホームページでは、「グローバル事例」として同社を取り上げ、「日本に並ぶバナナのおよそ3本に1本(はスミフル)」、「ミンダナオ島にスミフルグループが有するバナナ農園の広さは、約1万ヘクタール以上。東京のJR山手線の内側のほぼ2倍の面積です。この広大な農園でのバナナの生産は、現地の雇用にも貢献しています」(原文ママ)と、勝ち誇っています。
しかしその労働実態はまったく逆でした。なぜならバウティスタさんのような労働者の賃金は、1日わずか365ペソ(7ドル)。さらにスヤパ農園労働組合は非正規労働を正規雇用とすることを12年間も求め続けており、今回のストライキも団体交渉権というきわめて基本的な労働者の権利を求めて起こされたものだからです。
この他にもスミフルなど多国籍企業の農場では、農薬の空中散布による健康被害、また労働者・農民の収奪などが問題になっています(詳しくはDVD「甘いバナナの苦い現実」を)。
DVD「甘いバナナの苦い現実」
▽制作・申し込み先
アジア太平洋資料センター(PARC)TEL 03(5209)3455
▽定価 6500円+税
▽本編78分 カラー
真相究明と労働環境改善を
バウティスタさんの殺害を受けて11月8日、アジア太平洋資料センター(PARC)の呼びかけで、スミフルジャパン本社(東京都渋谷区)前で、真相究明と労働環境の改善を求める緊急の連帯行動が行われました。
日本でスヤパ農園労働組合の支援活動に取り組んでいるブッチ・ポンゴスさんは、「現在のドゥテルテ大統領の就任以降、バウティスタさんのような政治的反対者が158人も殺されている」と告発。「ドゥテルテ政権が新自由主義政策に固執し、外国資本に便宜を与え続けるかぎり、フィリピンでの労働者の殺害や暴力が続く。スミフルも労働者のたたかいを抑えつけるために、こうした暴力を利用すべきではない」と訴えました。
(新聞「農民」2018.11.26付)
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