「水産改革法案」緊急フォーラム
JCFU全国沿岸漁民連などが共催
拙速審議は許さない
現場の漁民に内容周知を
企業に海が守れるのか
安倍政権が今国会での成立を狙っている「水産改革法案」をテーマに、JCFU全国沿岸漁民連絡協議会が11月5日、国会内で緊急フォーラムを開きました(漁業法改正案に反対する漁業経済研究者の会、21世紀の水産を考える会が共催)。緊急の呼びかけにも関わらず、資料も足りなくなるほどの参加者で、熱気にあふれた討論が繰り広げられました。
現場と断絶
元東京大学教授の加瀬和俊さんが水産改革の内容と問題点について報告しました。加瀬さんは、「今回出された法案は、規制改革推進会議の議論以上の水産庁の“過剰追従”ともいうべき内容になっているのが特徴で、現場の実情ときわめて断絶している」と猛批判。
資源管理について、「これまで行われてきた船の数や大きさの制限、禁漁区や漁期の設定といった大型経営体の足かせになることはやめて、大型経営体が自由に操業できるよう、それに都合のよい資源管理論を持ち出している」と述べ、すでにクロマグロなどで行われているようなTAC(漁獲可能量)とIQ(個別漁獲割り当て)による管理方式を漁業全体に広げ、船の大型化を進めようとしていることを批判しました。
また沿岸漁業や養殖漁業などに重要な区画漁業権を、これまで与えられてきた漁協ではなく経営者そのものに免許を与えるという原則への変更も問題だと指摘。「これによって大型経営体は漁協から独立し、これまで漁協などが中心になって担ってきた地域の海の資源管理や公平性を保つ取り組みとも無関係に操業できることになる」と危惧を示しました。
中身知らせず
続いて水産庁課長補佐の櫻井政和さんが、法案について説明。「水産資源は全般的に減少している一方で、漁業技術の進歩もあり、船の数やトン数の規制などの資源管理が効果的でなくなってきた」と改定の目的を述べました。
香川県海区漁業調整委員会会長の濱本俊策さんは、「水産行政の根幹を変える法案なのに、内容がいまだにきちんと公表されていない。資料も説明会終了後に回収される。水産庁は反発がこわくて、漁業者に知らせないうちに通してしまうつもりなのか。浜の現場で内容を理解している者はほとんどいない」と批判。
また香川県では「水産改革」に対し、県議会が慎重な検討を求める意見書を採択したほか、県漁連(県の漁協連合会)や海区調整委員会も会長名で要望書を提出するなど危惧の声が広範な漁業関係者からあがっていることが報告されました。
TACでいいのか
討論では意見が噴出。
愛媛県うわうみ漁協(宇和島市)の漁業者は、「養殖がさかんな地域だが、企業への漁業権開放を強く懸念している。私たちは安全安心な魚を生産しようと海を大切に保全し、活用しているが、現在参入している企業は海の清掃作業にも一度も来たことがない。企業が本当に海を大切にするのか」と、訴えました。
また千葉県沿岸小型漁協の漁業者は、23年前からTAC制度で漁獲制限の始まったイカ漁で起きている矛盾を告発。「大中型巻き網船がイカを取り始めて以降激減し、TAC制度に入ったが、今でもイカの漁獲は回復していない。これは水産庁のTAC制度の失敗を表しているのではないか。今後、さらに他の魚種にもTACが拡大されたら、日本中の魚がいなくなるのではないか」と述べ、大量漁獲する経営体に漁獲枠を大量配分し、小さな沿岸漁業者の漁獲規制につながりかねないTACによる資源管理に強い疑問を投げかけました。
漁民連は緊急フォーラムに先立ち全政党の衆参議員全員に出席を要請。自民党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党の議員らが出席しました。
(新聞「農民」2018.11.19付)
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