「農民」記事データベース20181112-1335-10

ふるさと
よもやま話

宮城農民連会長
鈴木道夫


現代に生きる「五日市憲法草案」

 卓三郎の生誕地

 私の住む宮城県栗原市は、明治初期に人権尊重の思想を強くにじませた私擬憲法草案「五日市憲法」起草者の千葉卓三郎の生誕地です。

 いま安倍政権による9条改憲がかまびすしいなか、彼の史跡を巡る来訪者が増えています。

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千葉卓三郎の顕彰碑(宮城県栗原市)

 求道者となり、
 学問・宗教重ね

 卓三郎は、17歳で仙台藩士として戊辰戦争に参加。白河口の戦に敗れると、求道者となり、学問、宗教の遍歴を重ね、放浪します。

不撓不屈・向学の強い志

 縁あって東京都五日市町(現あきる野市)に住み着き、折しも自由民権運動の高揚期、生来の不撓(とう)不屈・向学の強い志は、その地域の高い政治的風土に投合し、たちまち頭角を現すリーダー的存在となり、明治14年に憲法草案を完成させます。

 明治政府の弾圧
 草案は土蔵眠る

 しかし、結核に侵され、明治16年に31歳の若さで波乱の生涯を閉じます。さらに明治新政府の厳しい言論弾圧により、自由民権運動もとん挫し、その憲法草案は永く旧家の土蔵に眠ることになったのでした。

 それが昭和43年、東京経済大学の色川大吉教授らによって、“開かずの土蔵”から発見されたのです。全204条から成る草案は、多くの人権条項があり、現憲法に通じる先駆的な内容で、国内外から高く評価されるものでした。

 発見から11年後、その偉業を後世に伝えるべく起草地の旧五日市町、墓地の仙台市、生地の旧志波姫町は相呼応して五日市憲法、千葉卓三郎の顕彰碑を同時に建立したのでした。

 碑には天賦人権、自由と平等、地方自治等代表的な人権条項6カ条が刻まれています。また、旧志波姫町は、毎年新成人に現憲法と五日市憲法草案を併載した小冊子『おらほの憲法』を贈呈していました。

 そうしたことから強い関心が向けられるのですが、碑を案内すると厳かにたたずむその時代にみな驚きの声をあげています。卓三郎が伝えたかった思想は、現憲法前文に見事にうたいあげられており、私は、その読み込みこそ、いま最も必要なのではないかと強調しています。

 先般、フリーライターのツルシ・カズヒコさん、奥さんでイラストレーターのワタナベ・コウさんが卓三郎の史跡を取材に訪れました。(10月14日付「しんぶん赤旗」日曜版に紹介)

 その折にいただいた小本『秩父事件再発見』は、奥さんとの軽妙な対談を交えて事件の真相から顕彰事業までの経緯を興味深く解説しています。

 農民運動に誇り

 神山征二郎監督の『草の乱』に映画化されましたが、単なる暴徒・暴動とは次元の違う「圧政を変じて良政を」と、やむにやまれぬ武装による民権運動だったのです。

 翻って私達の農民連運動、エンピツ1本を武器に当時と重なるものがあり、世界とも連帯していることは大いなる誇りです。

(新聞「農民」2018.11.12付)
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2018年11月

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