「農民」記事データベース20181105-1334-07

2018年産米

JA概算金引き上げも
農家の減収は確定的に!


収量減、品質低下が追い打ち

 「異常気象」続きの2018年。収穫期を迎えても治まらず各地で懸命な収穫作業が続いています。政府が米の需給安定から「完全撤退」した初年度になる2018年、米の価格と需給は、霧の中を手探りで歩むような状態になっています。

 わずかな情勢の変化で、めまぐるしく変わる米流通、市場任せの米政策。主食である米の生産・流通を、限りなく「博打(ばくち)」の世界にするのが、安倍官邸農政の米政策であり、農家には米づくりの意欲を失わせ、離農が一気に進む事態を招きかねません。

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高温障害、日照不足、豪雨、高まる気象リスクのもとでの米づくり。7月の豪雨であぜが崩れた大阪府能勢町の田んぼ

 JA概算金上昇も、全農相対価格はすえ置き

 農協の概算金は、概ね昨年並みか、数百円程度引き上げられています。

 これは昨年、集荷で苦戦したためで、必ずしも米価上昇を見込んだものではありません。それを裏付けるように全農の卸向け相対取引基準価格は据え置きが大勢を占めています。

 また、昨年は、多くの産地で概算金の早期の追加払いがありましたが、今年は一部の産地を除いては期待できないのが現状です。

 このような複雑な状況のもと、10アールあたり7500円の「米の直接支払交付金」が廃止され、60キログラムあたり850円程度の収入減がすでに確定しています。主食用米の作付け30ヘクタールなら225万円の減収です。

 さらに「異常気象」により収穫量減少、品質低下による等級落ちで米代金は下落し、農家の所得減少だけが確実に進みかねない事態です。

 昨年から一転、業者は在庫リスク回避へ

 7月27日に開催された食料・農業・農村政策審議会食糧部会で、「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」が了承されました。

 前年の需要実績755万トンに対して、昨年の6月末から今年の6月末までの需要実績が15万トン減少し、今年の6月末在庫が4万トン増えて190万トンとなり、来年6月末在庫は184万トンの見通しとなっています。需給安定の目安とされる6月末在庫200万トンを十分下回る水準です。にもかかわらず、業界に過剰感と米価下落への不安がぬぐいきれないのは、わずかな過剰が米価の大幅下落を招くリスクから、昨年とは異なり、仕入れに消極的になっているからです。

 作柄、収量減 読めない相場

 9月15日現在の作柄概況が全国は「平年並み」の100と発表されました。

 しかし、最大の産地北海道が「不良」90の大不作で、作付け2位の新潟県が「やや不良」の98です。また、「平年並み」とされた産地でも網下米が多く、全国の作況はさらに下振れの可能性があります。

 ただし、大量に発生すると思われる網下米を含めると、全体需給に大きく影響することはないとも思われます。

 春頃より外食関係での需要の後退やSBS(売買同時入札)輸入米の増大、20万トンの備蓄米入札の8万トン不落札などから、「米は過剰基調で米価は下落に向かう」との観測が広がり、大手卸を中心に在庫調整にともなう市場での販売が進行し、市場価格は下げ基調に転じていました。

 しかし、収穫期を迎えて作柄状況が明らかになるにつれ、大手卸などからも「戦略練り直し」などの声も聞かれ、品質の良い産地や銘柄によっては「価格は上がる」などの見方も出始めています。

 しかし、全体としては「下げ基調の勢いが弱まった程度」という見方が大勢です。2014年産の大暴落から、4年がかりでようやく回復軌道に乗せた米価が、再び暴落することがあれば、二度と回復は難しく、米作りから撤退する農家が続出することにもなりかねません。

 業者の間にも「ようやく認めてもらった価格、いまさら下げたくはない」の声も出ています。

 米と農家の組織に全力あげよう

 これからの米作りに大きな悩みを抱える農民の要求に応えて、政府の米政策の転換めざし、都道府県、市町村にも独自支援策を要求しましょう。

 また、各自治体・都道府県「再生協議会」に「産地交付金」の設定や単独の助成の実施も要求して運動を強めましょう。

 2018年度でも、加工用米への産地交付金の増額や市町村独自加算など前進した地域もあります。

 全国で農家人口減少に歯止めがかからず、地域での将来像が描けなくなってきている地域が広がっています。

 農家人口の減少だけなく、地域・集落のリーダーの不在が、農業を続けていくことに、個々の農家が展望を持てず、あきらめ感が広がる大きな要因でもあります。

 こんな時こそ農民連の出番です。生産から撤退せず、行政との関係も強化し、窓口的役割を発揮し、新規就農者の獲得、経営所得安定対策など各種制度の活用や充実もめざし、地域をまとめていく受け皿としての農民連組織や会員の力を多いに発揮すべき時です。

 来年を視野に「準産直米」の実績を大いに広めて

 大規模経営ほど、JA・業者・実需者・直売など販路は複線化させ、リスク分散を行っています。

 昨年、集荷が困難な中で、県連・産直センターと農民連ふるさとネットワークが協力して集落営農組織に働きかけを行い、8000袋を超す「準産直米」の集荷拡大を実現した産地もあります。

 2019年産以降を視野に入れた農家・法人訪問や「準産直米」説明会、「米づくり学習会」など、地域で話し合う学習会を開催し、会員拡大にも結び付けましょう。

 統一地方選、参院選で、安倍農政転換を

 10月に実施された、日本農業新聞の農政モニター調査では、安倍内閣の農政を「評価しない」が7割を超しています。

 「農家の声を十分反映していないため評価できない」82%、日米FTA交渉入りを決断したことに対して「評価しない」70%など、現場の農家の考え方はきわめて真っ当です。

 来年の統一地方選挙、参議院選挙で審判を下し、安部官邸農政の転換、安定した米づくり、地域づくりにつながる政策への転換を実現しましょう。

 「国は需給と価格の安定に責任を持て」「戸別所得補償制度の復活」「ミニマムアクセス米は縮小・廃止せよ」「日米FTA(自由貿易協定)反対」の世論を大いに高めましょう。

 農民、国民とともに「日本の米を守る運動」を大いに広げましょう。

(新聞「農民」2018.11.5付)
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2018年11月

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