北海道 地震・大停電
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離農のきっかけにするな
大きな農協ほど対応に遅れ
北海道地震で発生した全道的な大停電(ブラックアウト)では、酪農家は搾乳作業のための非常用発電機の手配に奔走する事態になりました。
個人で発電機を持っている酪農家もいましたがそれは少数で、持っていても古くてまともに作動しなかったという事例も多く、JAがリース会社などから手配した発電機や個人所有の発電機を地域内で融通しあい、搾乳しなければなりませんでした。こうしたなかで、大きな農協ほど機敏に適切な対応をとれなかったことが浮き彫りになっています。
職員が奔走した小さな農協も
北海道農民連副委員長で厚岸町の酪農家の石沢元勝さんの所属するJA釧路太田は、酪農家数85戸の比較的小さな農協ですが、今回の停電時には農協が所有する5台の発電機をフル稼働したほか、個人で発電機を所有する酪農家も農協がくまなく調査し、借り受けて、管内の全ての酪農家が少なくとも1日1回は搾乳できるよう、職員が一丸となって奔走しました。発電機の輸送や電気工事の手配をはじめ、発電機がスムーズに使えるよう、次の順番の酪農家に搾乳の準備をさせるなど、農協職員は不眠不休で対処したと言います。
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24時間稼働でロボットが人に代わって搾乳を行う搾乳ロボット。この牧場は翌日には通電し、最小限の被害で乗りこえた(北海道士幌町) |
一方、別海町の酪農家、小杉良夫さんの所属するJA道東あさひは、100キロもの広範囲に道内最多の520戸もの酪農家を抱える大きな農協ですが、今回の停電では、搾乳ができているかを心配するより先に搾った生乳の廃棄を求める通知が届いた酪農家もあったほど対応は個人まかせでした。「農協の支所の職員は異動もあり、担当地区の酪農家の経営実態の把握どころか、名前と顔の一致すらあやしいのではないか。大きな農協になって、いいことは一つもない」と小杉さんは言います。
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カメラやレーザーなどで乳頭の位置や大きさを把握し、正確に搾乳カップを装着。終わったら自動的に外す |
離農せぬよう万全の経営支援を
大停電を経て、いま北海道の酪農家に個人で非常用発電機を導入する動きが広がっています。
しかし小さな酪農家でも50キロワット、大きな酪農家だと120キロワット以上の発電機が必要となると、その導入費用は100万円台から1000万円近くにもなり、こうした新たな投資が離農の引き金になるかもしれないと危惧されています。「ちょうど団塊の世代の酪農家が年金受給年齢にさしかかり、体力も厳しくなるなかで、酪農に大打撃を与える日欧EPA(経済連携協定)やTPP(環太平洋連携協定)などの動きもあって、やめるきっかけを探している酪農家はすごく多い」(北海道農民連釧根地区協議会議長で酪農家の岩崎和雄さん)と言うのです。
さらに、北海道は今年、全道的に低温、長雨、日照不足がつづき、かつて経験したことのないような異常気象となっており、飼料作物の大減収も危惧されています。今回の停電により廃棄した生乳や乳房炎による減収などの直接被害への支援はもとより、国による加工原料乳のナラシ対策の発動や、発電機の導入といった非常時対策の拡充など、「酪農家を離農させない」万全の経営支援が求められています。
(新聞「農民」2018.10.22付)
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