ふるさと
よもやま話
徳島県農民連会長
松長英視
中山間地農業の現状は
―徳島県の村から
私が住んでいるのは、徳島県で唯一の村、名東郡佐那河内(さなごうち)村です。徳島市に隣接し、旭ケ丸と轆轤(ろくろ)山に抱かれ、海抜60メートルから1000メートル、面積45平方キロメートルの山村です。
現在は、みかん、スダチ、キウイフルーツが中心ですが、戦前は嵯峨川と園瀬川の2本の川を利用して、1キロメートル以上の用水が段々に24線張り巡らされた棚田の美しい山里でした。
水田の7割以上みかん畑になる
しかし、農業構造改善事業により、水田の7割以上がみかん畑となったため、多くの用水の管理ができなくなり、千枚田といわれた棚田風景も消えつつあります。
一方で、清流と土壌に恵まれ、昔から「献上米」といわれるおいしい米づくりを続ける人もあり、市街地に近い村でありながら、水田の四季は美しく、自然に恵まれた里山の風景は何とか守りたいものです。
みかんの価格の低迷とともに、スダチやキウイに転換し、とくにスダチは、山村の気候にあっており、村の中心果実になりました。ハウスもの、露地もの、冷蔵ものとして周年出荷されています。
スダチは徳島県の特産物であると同時に、県花にもなっています。隣の神山町や阿南市とともに主産地となっています。県全体の生産量は7000トン余り。20年前から急速に高齢化、過疎化が進み、それとともに、放棄園が増え始めました。山村と樹園地の境がなくなったところから、イノシシ、サル、シカ等の農作物への被害が増え始め、今や鳥獣害対策が農業経営上の中心課題となっています。
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佐那河内村の特産物のスダチ |
自民党農政で日本農業滅亡に
自民党農政は、日本農業滅亡の政策だと言ってきた通りになりました。耕地面積の広さを除けば、日本は南北に細長く、四季に恵まれ、いろいろな作物をつくられる立地条件にあります。この条件を生かして若者がやる気のでる魅力ある農業に転換していくことが大事です。わが村も新しい生き方を求める移住者のための対策を取り始め、わずかながら若者が増えています。
魅力ある農業を先人から学び、農薬・化学肥料依存から、安全・安心な野菜、この地の利を生かした作物への転換をするために、学習などを通し、農村を愛する仲間を増やすことが急務です。
種をまき、育てる喜びもありますが、今年のような天候は厳しく、たいへんです。これは農業だけの問題ではありません。
「青空市」に今も野菜を出荷
私もかつては水田、みかん、養鶏、キウイなどに取り組んでいましたが、いまは一部の水田と若干の野菜のみとなりました。しかし、県農民連として25年ほど続けている「青空市」に今も野菜を出荷しています。一歩一歩、仲間を増やし、強化・前進してゆこうと思います。
(新聞「農民」2018.10.15付)
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