「農民」記事データベース20181008-1330-01

トランプ脅迫外交に屈し
“日米FTA”受け入れ

最悪の売国政治
3選安倍首相
最初の暴走

関連/共同声明への野党の談話


自動車関税上げ回避へ
日本の農産物差し出す

 自民党総裁に3選された安倍首相が真っ先にやったことは、事実上の日米FTA(自由貿易協定)交渉受け入れでした。

 総裁選中に「自動車の追加関税を発動させないようにすることが一番大切だ」と述べていた安倍首相。9月27日の日米首脳会談では、トランプ大統領の脅しに屈服し、日本製自動車・同部品への追加関税を回避するために、日本の経済主権と農産物市場を差し出すという最悪の屈辱・売国政治に踏み出しました。

画像
安倍首相(左)とトランプ大統領(首相官邸ホームページから)

 ウソとゴマカシ

 共同声明は「物品貿易協定」(TAG)という“新語”をひねり出し、安倍首相は「今回の合意は包括的なFTAとは全く異なる」と弁解しています。しかし、これはすぐにバレるウソです。

 日米共同声明には(1)主として日本の農産物を狙い撃ちにした関税引き下げ交渉に続いて、(2)「他の貿易・投資の事項についても交渉を行う」ことが明記されています。これは、日米2国間で包括的な貿易・投資の交渉を行う日米FTA交渉の合意そのものです。

 現に、トランプ大統領は「われわれはFTA交渉開始で合意した。これは日本がこれまで拒否していたものだ」と勝ち誇ってみせ、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は関税引き下げなど「早期の成果」を得たうえで、日本とは完全なFTAを目指すと強調しています。

 共同声明とアメリカ側の言明の両方から見て、ゴマカシが明白な二枚舌で日本国民を欺く首相の態度は、絶対に許されるものではありません。

 TPPをはるかに上回る農産物自由化

 共同声明では、日本側が農林水産物の関税下げはTPP(環太平洋連携協定)で合意した水準までが限度と主張し、アメリカ側がこれを「尊重」すると述べたとされています。「TPP水準を超えなければ国内の農業団体に理解を求めやすい」という思惑からですが、これもゴマカシ以外の何物でもありません。

 第1に、TPPはWTO(世界貿易機関)や他のFTAをはるかに上回る史上最悪の農産物自由化協定であり、共同声明でTPP合意水準まで譲歩すると一方的に誓約したこと自体が大問題です。

 第2に、世界中に関税引き上げという武器を突きつけて貿易戦争をしかけているトランプ政権が日本の主張を「尊重」するなどという保証は全くありません。

 もともとトランプ氏がTPPを離脱する理由としてあげていたのは、2国間交渉によってTPPより優位な条件を引き出せるというものでした。

 トランプ氏の忠実な部下であるライトハイザー代表は、首脳会談後、日本が「防衛ライン」とするTPPを「米国が求める協定とは大きく違う」と強調し、TPP水準を対日要求の「出発点」とすることを公言しています。

 しかも、自分で火をつけた米中貿易戦争のあおりで大豆や豚肉の対中輸出が激減し、そのハケ口を日本に求める動きが強まっており、パーデュー米農務長官は「日本は重要な顧客だ。高い水準の貿易協定を締結することは、アメリカの農業にとって最優先事項だ」との声明を発表しました。

 TPP水準を「出発点」に、これをはるかに上回る譲歩が迫られることは火を見るよりも明らかです。

 関税引き上げの「刃物」ふり上げ

 そのテコになるのが自動車・部品の関税引き上げという「刃物」です。EUやメキシコ、韓国に対する脅迫で味をしめたトランプ大統領は「関税は最高だ!」と吹聴しています。

 首脳会談では「交渉が続いている間は関税引き上げ措置は発動しないことを確認した」とされ、安倍政権は「成果」と誇っています。しかし、これは日本がアメリカの無理難題に応じなければ、いつでも「刃物」を振り回すという宣言にほかなりません。

 自民党は自動車工業会から8040万円、トヨタだけでも6440万円という巨額の献金をもらっています。自動車業界の目先の利益を最優先し、日本の農業を犠牲にする――こういうやり方を許すわけにはいきません。

 国民と野党の共同で倒そう安倍政権

 事実上の日米FTA交渉受け入れという事態に、TPP反対運動のように国民と野党の共同が大きく燃え広がる機運が強まっています。

 憲法改悪と消費税大増税を公言し、売国・亡国の日米FTA交渉にのめりこむ安倍政権を国民と野党の共同で打倒するときです。


共同声明への野党の談話

 立憲民主党・枝野幸男代表「理不尽な妥協に追い込まれつつある。大変強く懸念している」

 国民民主党・玉木雄一郎代表「紛れもなく2国間FTAだ。早急に国会を開いて合意内容の説明を求める」

 日本共産党・志位和夫委員長「日本の経済主権を身ぐるみ米国に売り渡す日米FTAには断固反対だ」

 社民党・吉川元幹事長「日本農業に壊滅的打撃を与えかねない。厳しく抗議する」

(新聞「農民」2018.10.8付)
ライン

2018年10月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2018, 農民運動全国連合会