「農民」記事データベース20181001-1329-01

沿岸漁民の暮らしを守る
水産政策に転換を

関連/零細漁民の漁業権奪う「水産改革」強行するな


小規模・家族漁民の心一つに

JCFU全国沿岸漁民連 結成総会開く

 「今こそ沿岸・小型漁民が一つになって手を携え、国を動かしていこう」――沿岸漁民の全国組織「JCFU全国沿岸漁民連」(正式名称はJCFU全国沿岸漁民連絡協議会)が9月20日、東京都内で結成総会を開催し、北は北海道、南は沖縄県石垣島まで全国の沿岸漁業者が集いました。

 全国沿岸漁民連は2015年に準備会を結成し、沿岸漁民の要求実現や、漁業フォーラムの開催などに取り組んできました。今年6月には、クロマグロの漁獲規制の見直しを求めて、全国から650人もの漁民が集い、農水省前を埋め尽くす共同行動を実施。こうした運動の広がりのなかで、新たに北海道、青森、沖縄からも加盟が相次ぎ、3500人もの会員数となって結成総会を迎えました。

 主催者あいさつした共同代表の一人で、千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合の鈴木正男組合長は、「漁業資源の減少など、全国の漁村がさまざまな問題を抱えているが、零細漁民の声はなかなか国の政策には届かない。しかし一つにまとまれば国も動かせる。地域に帰って、この沿岸漁民連の運動を漁師仲間にきちんと伝え、自治体や議会にも働きかけて、沿岸漁業を守る地域ぐるみの取り組みにしていこう」と呼びかけました。

 事務局長の二平章さんが議案報告を行い、来年から始まる国連の「家族農業の10年」では小規模漁業の振興も明確に位置付けられていること、とくに2022年を「国際家族漁業年」とするとの報道があることを紹介。「漁業経営体の94パーセントを占める小規模・家族漁業こそが日本の漁業と漁村の地域経済を支えている。私たちは自信を持って、大規模漁業ばかり向いている今の水産政策を転換させる運動を進めていこう」と述べました。

 来賓として、「日本の伝統食を考える会」事務局長の生田喜代子さん、元山形大学教授の綱島不二雄さん、農民連の笹渡義夫会長があいさつ。笹渡さんは、「今日は日本漁業にとって歴史的な日だ。日本の食糧と食文化を支える農民と漁民が、兄弟組織として肩を並べることができ、こんなうれしいことはない。国民諸階層と連帯し、農山漁村をよみがえらせる運動をともに進めよう」と、熱いエールを送りました。


沿岸漁民フォーラム

零細漁民の漁業権奪う
「水産改革」強行するな

 JCFU全国沿岸漁民連は総会後、「水産庁『漁業制度改訂案』の問題点をさぐる」をテーマに、沿岸漁民フォーラムを国会内で開催しました。

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色鮮やかな大漁旗の並んだ漁民フォーラム

 共同代表で、北海道焼尻島のマグロ漁師、熄シ幸彦さんが主催者あいさつ。「浜の漁師には水産改革(改訂案)の中身がまったく知らされていない」と述べ、「水産改革」が沿岸漁師の同意なく進められたクロマグロの漁獲規制と同様に進められていることに強い危機感を示しました。

 福井県立大学の長谷川健二名誉教授と、香川海区漁業調整委員会会長の濱本俊策さんが特別報告を行いました。

 長谷川さんは、「『改訂案』は漁業制度も理解せず、漁協への偏見ばかりが先行する規制改革推進会議の答申に沿っており、新自由主義的発想ですべてを規制緩和しろというもの」と指摘。「漁協を中心にした漁場の自主管理システムや、小規模零細漁業者の漁業権を奪うものだ」と、厳しく批判しました。

 濱本さんは、漁業調整委員会をはじめ漁業者にはまともな説明も意見聴取もないまま、次の臨時国会で法案が提出されようとしていることに強く抗議し、「今こそ全国の漁民は黙っていてはいけない。行動を起こすときだ。このままでは日本の漁業に末代まで禍根を残す大改悪が行われてしまう」と、警鐘を乱打しました。

 漁獲規制は地域に合うやり方で

 各地の漁民代表も、クロマグロの漁獲規制などの現状を報告。青森県大間漁協からの参加者は、大規模な巻き網漁ばかりが優遇され、沿岸漁民には生活できるだけの漁獲配分が行われていない現状を告発。「マグロ漁師には青年も多い。この青年たちの芽を摘むような水産政策では、地域創生なんてありえない。全国の青年漁師のためにもみんなで政治を動かそう」と呼びかけました。

 沖縄県石垣島のマグロはえ縄漁師は、「資源管理は必要だが、はえ縄漁では半分が死んで海から引き揚げられるため、一律の規制では資源保護にならない。規制は漁民の声を反映し、地域の漁法や実情に合ったやり方でやるべきだ」と訴えました。

 全国沿岸漁民連はフォーラムに先立って、全政党の衆参議員全員に出席を要請。自民党、立憲民主党、日本共産党の議員らが出席しました。

 水産庁などに要請

 また21日には、水産庁や全漁連(全国漁業協同組合連合会)などに、「漁業制度の改定を強行しないこと」などを求める要望書を提出しました。

(新聞「農民」2018.10.1付)
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2018年10月

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