韓国でのGM(遺伝子組み換え)表示の実態は?
日本消費者連盟 纐纈美千世事務局長
日本消費者連盟の纐纈(こうけつ)美千世事務局長は7月19日、韓国・ソウルで開催された遺伝子組み換え(GM)表示の国際シンポジウムに参加しました。24日に都内で開かれた報告会で「韓国で盛り上がる遺伝子組み換え表示改正運動」について報告しました。その大要を紹介します。
盛り上がっている表示改正運動
GM作物輸入は
米国・ブラジル
韓国では、日本と違いGM作物の商業栽培は禁止されています。試験栽培は大学や公的機関で行われています。
輸入・流通・販売が承認されているGM作物は、大豆、トウモロコシ、ナタネ、綿、テンサイ、アルファルファの6作物です。日本では、この6作物とパパイア、ジャガイモが承認されています。
韓国の食用としてのGM作物輸入は、2016年で約200万トン、大豆やトウモロコシが多く、GM作付大国のアメリカやブラジルからの輸入が多くなっています。
韓国のGM表示制度は表の通りです。
その問題点の1つめは、意図せざる混入率が3%まで認められていることと、日本と同じように「DNAやたんぱく質が残らない食品(油やしょうゆなど)は義務表示の対象外」となっていることです。
2つめは、混入率0%でないと「Non―GMO」表示が許されず、実質的に「Non―GMO」表示が不可能になっている点です。
完全表示めざし
57団体が請願
韓国では、今年に入ってからGM食品完全表示制度を求める国民請願を57団体で行いました。要請内容は、(1)GM原料を使った食品には例外なくGM表示をする(2)学校給食でのGM食品の使用禁止(3)Non―GMO表示不可能な現制度の改正――です。3月12日から4月11日の1カ月間で21万8688人分の署名が集まりました。
集まった署名に対して、韓国政府は、GM食品の安全性を巡っては議論があること、物価上昇・貿易摩擦のおそれなどを理由に、GM完全表示に難色を示しました。Non―GMO表示の実施についても、混乱をもたらす可能性があるとして、拒否しました。
一方で、消費者団体の意見を十分に聞き取り、専門性や客観性が確保された協議会を設置し、今後のGM表示制度について検討することを回答しました。その後、5月に入って、運動団体側は、政府を批判する記者会見を開き、ムン・ジェイン大統領にGM表示制度改善の公約を守るよう要請する文書を送付し、今回の国際シンポを開催するなど表示改正運動は盛り上がっています。
日本より進んで
いる点も多い
日本と同様韓国では、「遺伝子組み換え」表示はないと聞いていましたが、実際どうなのか、また日本から輸入している食品で「遺伝子組み換えでない」の表示はどうなっているのかを調査するために、ソウル駅に隣接する百貨店に行き、調べてみました。
その結果、「遺伝子組み換え」表示は日本同様皆無でした。日本の食品の「大豆(遺伝子組み換えでない)」という表示は、韓国では「遺伝子組み換え大豆を含んでいる可能性あり」となっていました。
また、日本から輸入したコーンスナックの表示をみてみると、「コーングリッツ(遺伝子組み換えでない)」が、韓国では「コーングリッツ(遺伝子組み換えトウモロコシを含んでいる可能性あり)」となっています。
さらに、他の原材料にも、「でん粉」の場合は(遺伝子組み換えトウモロコシを含んでいる可能性あり)と付記され、「たん白加水分解物」「みそパウダー」の場合、(遺伝子組み換え大豆を含んでいる可能性あり)と付記されている点は、日本より進んでいると思います。
なお、日本から輸入したしょうゆの「遺伝子組み換えでない」という日本語の表示はシールで隠してありました。
(新聞「農民」2018.9.24付)
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