「農民」記事データベース20180924-1328-07

台風21号
西日本に甚大な農業被害

生産意欲喪失、来年の栽培断念防げ
一刻も早い復旧支援必要

 8月28日、南鳥島近海で発生した台風21号は、非常に強い勢力を保ったまま近畿地方を直撃・縦断し、死者9人という大きな被害を出しました。台風21号は強風などで各地の農業にも大きな被害をもたらしています。被災地からの報告です。


大阪

泉州の野菜産地直撃
府に緊急支援を要請

阪南支部協議会事務局長 下村晴道さん

 大阪を直撃した台風21号は、「食い倒れ大阪」の新鮮な野菜の供給地、泉州地域に甚大な被害をもたらしました。泉佐野市の泉和彦さん(66)は、「父の跡を継いで40年以上農業を続けてきたが、こんな被害は初めて、近くのゴルフ練習場の風速計が『瞬間風速81メートルを記録した』と聞いている」と話しています。

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台風で倒壊した泉さんのハウス

 私も自宅(阪南市)が停電。翌日の早朝から組合員の被害状況を聞き取りに走りました。副会長の泉さんは、強風で根こそぎ押し倒された樹齢100年以上のむくの木、無残に押しつぶされた5棟の軽量パイプハウスの前で「どこから手を付けていいかわからない」と呆然としていました。

 泉州水ナス、春菊など軟弱野菜を栽培している組合員の新悟さん(48)は、早朝から奥さんと被害を受けたハウスの片づけをしていました。21棟のハウスのうち13棟が全壊した新さんは、「私も含め農家のハウスは全部被害を受けた。自力では再建できない」と支援を要請しました。

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新さんのハウスを視察する笹渡会長(左)

個人では再建できない
国、自治体の支援は必須

 私たちは、9月12日に大阪府に緊急の支援申し入れを行うことを決めて、各組合員に被害状況の報告と、被災写真、被災届と証明書の発行を市役所・町役場にすぐに行うよう伝えました。

 13日現在の組合員の被害状況は、13世帯でハウス35棟3190万円、野小屋(玉ねぎ)13棟650万円、稲や野菜の減収400万円、家屋被害など5736万円にのぼっています。

 泉州地域には2000戸の販売農家があります。私たちの調査だけでも、いかに被害が甚大かわかります。ハウスを復旧するだけでも個人では見通しが立ちません。泉さんは「ハウスの業者に電話したら、『おたくで500件目です。年内にはできない、いつになるかも見通しが立たない』といわれました。秋の作付けもめどが立たない。個人の力ではどうにもならない。こんな時に国や大阪府、自治体が助けてほしい」と切実に願っています。

 11日には農民連の笹渡義夫会長が被害の調査と激励に駆けつけてくれました。

 12日には、大阪府連として松井大阪府知事に「農業被害等に関わる緊急要望」を行い、6月の暴風雨被害対策として実施している被災農業者向け支援事業を台風21号被害にも実施するように国に求めること、その際、大阪府も一定の負担を行うことなどを求めました。

 25日には、近畿農政局への要請行動に農民連近畿ブロックで取り組みます。


和歌山

業者の手がまわらず
影響は次作以降にも

和歌山県農民連事務局 長田倫子さん

 台風21号は和歌山市で最大瞬間風速57・4メートルを観測し、和歌山県各地の農業と農産物に甚大な被害を発生させました。被害金額はおよそ21億8千万円(5日時点・県調査結果)にのぼります。

 紀ノ川農協だけ見ても、8500万円以上の農産物被害が算出されています。これらは現時点での被害総額であり、被害は来年以降にもその影響を及ぼし、被害総額は増大すると考えられます。

 農民連の笹渡義夫会長と農民連ふるさとネットワークの湯川喜朗事務局長が9月10日、紀ノ川農協を訪問。宇田篤弘組合長、和歌山県農民連の井上雅夫会長とともに紀の川市内の生産者のほ場を視察しました。

キュウリのハウス損壊
果樹は樹体損傷、落果

 特に被害の大きかった中山地区は、ハウスきゅうりの生産者が多く、ほとんどでハウスの倒壊などの被害があります。ビニールが破れただけでも、きゅうりは倒されて泥水に漬かっていました。これによりきゅうり出荷量が激減する見込みです。

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被害を受けたキュウリのハウス

 また大半が半促成トマトを栽培しているため、来年の2〜3月までに復旧できないとトマト苗の定植が間に合わず、収穫が見込めなくなります。しかし、業者の手が回らず、生産者の手で損壊箇所を撤去するなどの作業を行うしかない状況です。

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ハウス内のキュウリは泥水をかぶって倒れていました

 果樹の被害も甚大です。桃の木は平均で3〜5割、大きいほ場では8割もの被害が出ています。桃の苗も猛暑により不作となって、来年以降の収量の激減と生産者の栽培意欲の喪失も心配されます。すでに今回の台風被害により3人の生産者が次年度の桃栽培を断念してしまいました。

 柿の被害も桃と同様で、加えて落果や果実の打ち身等による品質の劣化、落葉による肥大停滞等の理由により、収穫は2割減の見込みです。

 キウイに関しては大半のほ場で激しく落葉しており、肥大停滞や日焼け果の発生、こすれによる劣化によって品質と生産量の低下が予想されます。さらに葉がないことで養分が不足し、大不作傾向が予想されます。

 みかんは紀ノ川流域のほ場で落果や倒木が一部見られます。倒木は早く元に戻すことができれば減収は食い止められますが、労力的に難しい生産者の所では被害が広がる可能性があります。

 みかんの収量は10%の減収が予想されます。有田地区や海南下津地区でも同様の被害が危惧されています。

 事態はきわめて深刻であり、早急に行政などの支援・補助が必要です。和歌山県農民連は、近畿ブロック2府4県の農民連や農民連本部と連携を取り、行政や国に現地の惨状を伝えて台風被害支援を働きかけていきます。

(新聞「農民」2018.9.24付)
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2018年9月

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