「農民」記事データベース20180910-1326-08

ふるさと
よもやま話

富山県農民連会長
大橋国昭


大規模圃場整備事業が始まるが…

 久しぶりに私の在住する富山市の水橋地区に、激震とまでは言えないが、大型区画の圃場(ほじょう)整備事業が始まろうとしている。農家の方は特別大声もあげず、冷静に受け止めているようだ。

 中間管理機構に農地を預けて

 この「事業」は、私の関係する3町内68ヘクタールの水田(工事区)をおおよそ1枚1ヘクタール区画にするものである。費用は、85%以上の農地が担い手に移行されれば工事の負担金が無料になる(他に反当たり約2000円の賦課金が必要)。負担金なしの「事業」の提起は、一般的に「これはありがたい」ということになった。

 「後継者がいない。農機具が買えない。低米価で放棄田が増えた」など、個々の農家の負担になっていた。水田単作地帯で平均1戸あたりの所有面積は1ヘクタール。少々の農地の移動はあったが、この「事業」を待っていたかのように他の地区でも次々と参入の手をあげ、手続きがとられている。

 農協の子会社と4人の担い手が決まり、中間管理機構に農地を預けさせ、それを担い手が負託することになる。直接的には農地と農民が切り離されることになって、農地の所有者ではあるが、細部というか事業の進行については関係ないということになる。

 農業に手をかけることがなくなることを「寂しくなる」と嘆く声もある。高齢者の方は「肩の荷が下りたようだ」と言う。大型化した後、若い人たちが戻ってくるだろうか。

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減反田の除草作業をする大橋会長

 共同体的くらしも急速に解体し

 「工事」の完了まで従来のまま生産することになるが、生産組合はなくなる。農道整備、用排水路の管理などの「人足」はなくなる。米は担い手名で出荷する。規模拡大し、生産性を向上させることでは成果を生むであろう。

 しかし、高齢化所帯が年々増加し、空き家も増え、若い人の流出は何ら話し合われることもなく、まったく別な話として横に追いやられているのが現状だ。

 効率が叫ばれれば叫ばれるほど、便利な場所、学校の近くとか、商店街の近くとかに住むということに向かわざるをえなくなると思う。

 長い年月、米づくりをしながら、何代にもわたって共同体的なくらしを続けてきたが、近年、急速にその解体が始まり、現在「これでいいのだ」という空気が沈殿しつつあるようにみえる。

 今年の富山米の概算金は、新銘柄「富富富(ふふふ)」が1万4500円、コシヒカリが1万3000円と発表された。「富富富」の売り込みは県当局も力が入り、今年は限定作であったが来年の作付けは大幅に伸びるだろう。

 それにしても戸別所得補償制度の廃止は痛い。安定した価格政策が望まれる。

(新聞「農民」2018.9.10付)
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2018年9月

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