北海道
低温・長雨・日照不足
農作物への影響甚大
こんなことは
経験したことがない
今年の北海道の気象は、春先は順調に推移し、小麦の開花も例年より早めとなりました。ところが、開花の終わった6月中旬以降は低温、長雨、日照不足が7月中旬まで続き、集中豪雨もありました。このかつて経験したことのない異常気象によって、農作物への甚大な影響が明らかになってきました。
秋まき小麦 農家から悲鳴
「半作近い」
「機械故障かと…」
すでに収穫が終わり、農協などの調整施設に入っている秋まき小麦は、コンバインが動きだしたとたんに悲鳴の声が上がりました。「刈っても、刈ってもタンクにたまらない。故障かと思ったがそうではない。量が少なすぎるからだ、とわかった」など、各地から「半作に近い状況だ」という声が上がりました。
そこで、農民連本部の笹渡義夫会長が来道し、全道各地の作柄の調査を行いました。小麦については北海道の西側が打撃を受けていました。訪問した、空知管内美唄市の鹿野政信さんは「何とか雨に当たらずに収穫できたが、量が少ないので作業が早かった。こんなことは経験したことがない。収量は半作に近い」ともらしていました。刈り取った小麦の株を笹渡会長が抜くとスポッと抜けてしまい、「根がやられている」と不作の要因を確認しました。
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米農家に状況をきく笹渡会長(右)と野呂書記長(左)=岩見沢市 |
野菜・牧草 不作相次ぐ
雄花ばかりのカボチャ
実る前に落花するトマト
牧草が雨で刈れない
東側の十勝やオホーツクでも、平年作を割り込み、春小麦は雨で収穫できず、穂発芽の危険性も強まっています。
野菜についても、岩見沢ではタマネギが水やけで根がダメになり、小ぶりの玉に、しかも、ねぎぼうずが多くのところで発生しています。カボチャも玉がつかず、十勝では「雄花ばっかり咲いている」、トマト「ニシバの恋人」で有名な平取町では「ハウスで栽培しているのに、咲いた花が落ちてしまう。ようやくついた実も途中で落ちてしまう」という実態で、集荷場が閑散となる状況。
牧草も雨で収穫ができないことから、乾燥牧草はロール1本(約360キロ)が1万6千円にも跳ね上がっています。
水稲 北海道農政部
2日遅れで、茎数少ない
出穂・開花にばらつき
米についても影響が懸念されます。長沼町の本間信雄さんは「10アールあたり5〜6俵もとれれば良しとしなければならない。穂がかがんできているのに、新しい穂が出て開花しているのもある(8月20日現在)。小麦も米と同じ位の収量か」とこぼしています。
岩見沢市栗沢町の松永有平さんの水田では「ななつぼし」はかがみはじめていましたが、「ゆめぴりか」の穂は棒立ちで花粉が飛んでいました(8月18日)。旭川市東旭川豊田の水田もかがんできてはいるものの、茎数も少なく、不稔もあり、今なお穂が出て開花しています。
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もうすぐ刈り取りの時期を迎えるのに… |
北海道農政部の8月15日の生育状況によると「2日遅れで、茎数少なく、丈短い」としています。この遅れと、生育の実態から、今年の作柄が懸念されます。
豆類も、背丈が平年の半分くらいで、大豆はさやを付けていますが、減収は避けられない状況です。
(北海道農民連 野呂光夫)
(新聞「農民」2018.9.3付)
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