「農民」記事データベース20180827-1324-15

ふるさと
よもやま話

滋賀県農民連会長
東野 進


農村生活体験の
教育旅行生を受け入れて

 子どもの泣き顔はじける笑顔に

 「ありがとう!」「元気でね!」――。離村式を終え4人の女子高校生はバスから身を乗り出して、一生懸命手を振って帰っていきました。いつのときも離村式での子どもたちの泣き顔と,はじける笑顔に、農村生活体験事業の素晴らしさを実感しています。

 わが家の受け入れの多くは中学生ですが、昨年11月に初めて千葉からの女子高校生4人を受け入れました。午後1時、体育館での入村式で出会うと薄く紅をさし、爪は光っており、着ているものも少々派手です。

 「ちょっと問題児なので…」。担当職員の説明を受け、少し戸惑ったのですが、いつものように家までの車中で子どもたちの緊張をほぐすように話しかけると、いつもより元気な声が返ってきます。「よしよし」です。

 家に着くとお茶を飲みながら、自己紹介です。家内と二人暮らしの日々に、自分の子どもが帰ってきた喜びの気持ちを伝え、下の名前で呼び捨てにすることを言うと子どもの笑顔が返ってきます。

 一息後いよいよ3時前から農作業です。困ったことに「ジャージをもってきていない」とのこと。「おいおいスカートでは無理だよ!」と家内がヤッケの上下を用意して何とかクリア。今回は1400本の玉ねぎの定植作業を準備したのですが、「超楽しい!」と一番派手で元気な子が笑顔で引っ張ります。休憩することなく4人で一気に植えてくれました。今回の玉ねぎは6月に子ども達が収穫し、野菜ボックスに入りました。

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教育旅行生のみなさんと東野会長(中央)

 畑から野菜とりギョーザづくり

 休憩後はトラクターに乗ったり、草刈りしたり、できる限り農作業体験をして帰宅後は畑から野菜をとり、お母さんと一緒にギョーザやおかずをつくってにぎやかな夕食です。

 夕食後は「鹿ウオッチング」にでかけます。電灯のない暗い山道を走る時から車中は大騒ぎ。穴場につくと目の前に十数匹の鹿の群れに遭遇、この日はイノシシ、タヌキ、猫まで出会えて4人の声が格別弾んでいました。入浴後団らんの後の寝間からは遅くまでにぎやかな笑い声がうるさく続いていました。

 人間教育力のすごさに誇り

 滋賀県日野町での「三方よし!近江日野田舎体験推進協議会」での教育旅行生の受け入れは初年度の21年度は189人でしたが、30年度は4446人と大好評です。

 一般社団法人「近江日野交流ネットワーク」では、受け入れ農家の質的向上に取り組んでいます。

 私は毎回実感する農業と農村社会の持つ人間教育力のすごさを誇りに、かつては学校給食で子ども達の食生活を変えさせられましたが、今の子ども達に農業と農村の良さを少しでも伝えねばとの思いで、もう少しがんばる所存です。

(新聞「農民」2018.8.27付)
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2018年8月

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