「農民」記事データベース20180827-1324-10

どうなる今年の米価

安心して“米が作れない”
“商売できない”

 いよいよ日本列島は実りの秋を迎えました。国が生産数量目標の配分をやめ、米の需給と価格の安定に対する責任を完全に放棄した初年度の今年。作柄は? 米価は? 農家はもとより、米業者もそして国民も不安は高まるばかりです。


混乱が常態化する
市場任せの米政策

 4月を境に一転、市場価格は下落へ

画像  2015年産以来3年続けて米需給は締まり気味で、米価も一定程度回復してきました。

 3月頃までは、「今年産も作付け動向などから大きくこの流れは変わらない」とみられていました。しかし、4月頃から始まった一部銘柄米の市場価格の下落が、その後も広がり続けています。

画像  これは、消費量の減少や米価回復を嫌う中外食業界の「節米」や主食向けSBS輸入米へのシフト、さらには今年産の備蓄米入札が不調で8万トン余りが主食に回る可能性などから「今後の需給はゆるむ」と見込んで、大手卸が在庫処分に動き、米業者は総じて今までの「いかに米を積み上げるか」から一転して「いかに在庫を減らすか」に転じたためです。

 農水省は7月27日、今年の6月末の民間在庫は190万トン、来年6月末在庫を184万トンの見通しと公表しました。農水省は従来から6月末在庫は200万トンが需給均衡の目安としてきましたが、今年、来年ともそれを下回る水準です。

 概算金は昨年並みの声もあるが…

 農協系統は今年産の概算金を今のところ、「据え置き、または微増」などと伝えられています。昨年産の集荷率の後退などから「下げるのは難しい」との判断と思われます。ただし、全農は卸向け相対価格を昨年並み(とれ秋に上下10パーセントの調整あり)としています。

 今後、今年産米の作柄が平年並み、または平年を上回れば過剰感が増し、価格が下落する可能性が高まっています。一方、災害や異常気象の影響で作柄が不良ともなれば一気に不足感に転じて、昨年同様、市場は過熱する可能性もあります。

 政府の米政策こそ混乱の最大要因

 さらに、大手量販店やコンビニ・外食チェーンなどの商品構成や原料米の調達方針により、特定の産地銘柄の価格変動もありえます。

 このように、作柄や大手流通資本の思惑などの要因で価格と需給が混乱しますが、特に今、市場が過敏に反応する最大の要因は、政府の民間任せに徹する米政策が米関係者に不安を増幅させているからに他なりません。

 農家はダブルパンチ中小米業者も…

 農家は今年から10アール7500円の固定払いが廃止され、1俵(60キロ)850円程度の減収になります。米価下落ともなれば、ダブルパンチにさらされ、ただでさえ疲弊の進む生産現場。一気に生産から撤退ということにもなりかねません。国民の主食の確保の上で重大な事態です。米業者、中でも中小の業者は、差損の回避のため在庫調整などの対応を迫られ、逆に価格高騰ともなれば原料米の確保や末端価格の転嫁に苦しむことになります。

 生産者と中小米業者も振り回される政府の米政策の破たんは明らかです。

 需給と価格の安定へ政府は責任を果たせ

 農家が安心して米を作り、中小の米業者も安心して商売に専念できる、そして国民も主食の米を国産で確保できる政策への転換は待ったなしです。

 「政府は米の需給と価格の安定に責任を果たせ」「義務のない輸入米(特にSBS輸入米)ストップ」「備蓄米は計画通り20万トンまで買い入れよ」「戸別所得補償の復活を」などの要求を多くの国民とともに強めましょう。

(新聞「農民」2018.8.27付)
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2018年8月

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