「農民」記事データベース20180827-1324-01

原発ゼロは今すぐ実現可能

インタビュー
原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
会長 吉原 毅さん(城南信用金庫相談役)

 今年3月、立憲民主、共産、社民、自由の野党4党が「原発ゼロ基本法案」を国会に共同提出しました。法案には、「すべての原発を5年以内に廃止すること」や、「2030年までに再生可能エネルギーを電力供給の40%以上にすること」などが明記されています。この共同提案のきっかけとなったのは、元首相の小泉純一郎氏、細川護煕氏が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(略称、原自連・げんじれん)」が同法案の骨子案を1月に発表し、野党や市民に「原発ゼロ・再エネへの転換」に向けて結束を呼びかけたことです。原自連の会長で、城南信用金庫相談役の吉原毅(よしわらつよし)さんに、お話を聞きました。


「原発なくせ」は国民の一致した願い
“右“も“左“もない

 原発事故を二度と起こさない

画像  原自連は、自然エネルギーの推進を通じて原発を止めようという市民の方々と、訴訟を通じて原発をとめようとがんばっている方々が集まって、「原発ゼロ」と「自然エネルギー」の両方を明確に掲げて結成しました。

 私たちの最大の主張の一つは、原発は「ただちにゼロに」というものです。あの福島第一原発の事故で、福島では今でも多くの方々がふるさとに帰れない。それなのに国は年間20ミリシーベルトという国際基準を20倍も上回るところに帰還させようとしている。原発事故は今も収束していません。原発事故は二度と起こしてはならない事件なのです。原発は「保守とか革新の問題ではない」ということがよくわかったと思います。

 原発の推進は「お金の暴走」

 この前の国会では、自民党は「原発ゼロ基本法案」の審議入りを拒否しました。今の自由民主党の本質は「経済優先主義」、つまり「金のための自由」と「多数派による横暴の民主」と言えるのではないでしょうか。本来は「理想を実現するための思想の自由」と、「人々の良識を結集するための民主」であるべきなのに、そうなっていない。

 本当の「保守」とは、人の良識や正しい考え方、文化をきちんと受け止め、今後も正しい方向に維持するのが本来の「保守」ではないでしょうか。そしてじつはいまリベラルといわれる人たちも、めざすところは思いやりが大切にされる社会に変えたいということだと思います。

「今さえよければ」から
「未来に続く地球と社会」へ

 今の本当の対立軸は「保守」や「リベラル」ではなくて、「金を大事にする」のか、それよりも「人間を大事にする」のか、あるいは「自分さえよければよい」のか、「みんなの幸せが大事」なのか、また「今さえよけばいい」のか、それとも「未来に続く地球と社会を守るのか」ということではないでしょうか。これはそもそも政治の根源的な対立軸です。

 原発の推進は「お金の暴走」であり、「自分さえ、今さえよければよい」というもので、この対立軸で考えれば、保守こそ先鋭的に考えるべき問題だと思います。

 「原発ゼロ」を国会の大争点に

 原発には経済合理性もありません。再エネは今や世界で大きく増え、太陽光発電のコストは欧米では1キロワット当たり2〜3円にまで下がっています。一方、原発はかつてはコストが安いと言われましたが、それはうそ。安全基準の強化や使用済み核燃料の処理費も無限大です。

 かつて原発は1基5000億円でしたが、日立が今度、イギリスに売ろうとしている原発は1兆5000億円もします。しかもメガバンクは事故などによる貸し倒れに備えて「日本政府が融資の全額を債務保証しなければ貸さない」と言っているのですから、原発が経済的にも高リスクなのは明らかです。

 原自連の提案では、原発の即時廃止で電力会社がつぶれてしまわないよう、20〜30年かけて減価償却することを提案しました。私たち金融界はバブル崩壊後には110兆円、国鉄民営化の時には37兆円もの不良債権を処理しました。原発の資産は10数兆円です。時間をかければ電力会社も、銀行も問題ありません。

 廃炉には40年もかかりますから、原発立地地域はその間に新しい産業、つまり再エネで地域を興せば、年間25兆円もの化石燃料の輸入代金が地域に循環することにもなりますし、新たな雇用も生まれます。原発即時ゼロこそ、最も現実的であり、誰も困らないのです。

 すぐに法案が通るとは思いませんが、国会で議論することで大きな争点となり、基本法案の審議にすら反対する与党の責任も明らかになります。「原発ゼロこそ現実的」――このことに確信を持って運動していくことが大切だと思います。

 農村の再エネ阻む「原子力ムラ」

 城南信用金庫は、千葉県匝瑳市の大規模ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に融資したりと再エネ事業を応援しています。農家の皆さんには、ぜひ営農型太陽光発電に取り組んでいただきたい。それが農業と地域を活性化する力にもなると思います。

 しかしこれを阻んでいるのが、原発再稼働のために再エネの送電をしないという電力会社の接続拒否です。「原子力ムラ」は農業や地域を守る取り組みも邪魔しているのですね。この不当な動きに、みんなで一緒に反対していきたいと思います。

(新聞「農民」2018.8.27付)
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2018年8月

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