「農民」記事データベース20180806-1322-08

ふるさと
よもやま話

福島県農民連副会長
本多芳司


汚染土実証事業を
市民の力でストップ

 私は福島県二本松市東和地区(旧東和町)で生まれ育ちました。二本松市は西にあだたら山、中央に阿武隈川が流れ、東は阿武隈山系の山々に囲まれています。私の家は阿武隈山系の標高400メートルのところにあり、農民連専従をしながら、水稲、平飼い養鶏、ハウストマトを営んでいます。

 除染した土を市道の路床材に

 今年の春、二本松市では「放射性汚染土壌再利用実証事業」が地域の大きな問題となりました。これは除染した土(黒いフレコンバックに入った土)を市道の路床材として使う実証事業です。二本松市原セ才木地区(21世帯)の市道200メートルをアスファルト舗装し、安全だということを実証するための事業です。通常の舗装工事ならば300万円弱でできるのですが、環境省はここに約3億5000万円を投じて実証事業をやるというのです。

 環境省は、昨年10月、原セ才木地区で9戸の参加で説明会を行い、地区の「了承」を得たとし、原セ地区全体にだけ事業実施を回覧板で知らせました。二本松市民全体を対象とした説明はもちろんなく計画を進めてきました。環境省の進め方や市の「不透明な受け入れ経過」に対し、市民の不安や不信、批判が広がりました。

 講演会や署名で反対の声広がる

 「みんなでつくる二本松・市政の会」(構成団体は農民連や新日本婦人の会、教職員組合など)は、市民の反対の声の広がりを受け、東日本大震災・原発事故救援・復興二本松市民共同センターと連携し、2月20日に申し入れを環境省に行い、計画の撤回を求めました。

 また、3月に市民の皆さんと問題を共有する講演会を開催。4月から進めてきた事業撤回を求める署名は約5000人分に達し、5月21日に環境省に提出しました。

 環境省は、6月26日、二本松市役所を訪れ、「放射性汚染土壌再生利用実証事業」の方針を、三保恵一市長に伝えました。翌26日、市議会議員協議会に報告された環境省の方針は「複数回の説明会において、風評被害への懸念など多数のご意見をいただいたことを踏まえ、……請負業者との解約解除に向け調整することとしたい」という内容でした。

 三保市長は、環境省に対し、「重ねて慎重な判断を求めるとともに、併せて中間貯蔵施設への早期輸送を要請した」ことも議員協議会で明らかにしました。

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実証事業が計画されていた市道(二本松市)

 環境省が請負業者との「契約解除」を表明し、計画をストップさせたのは、「みんなでつくる二本松・市政の会」や「復興共同センター」が中心となり、この間の市民の声や運動の広がりが大きな力になった成果でした。

(新聞「農民」2018.8.6付)
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2018年8月

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