「農民」記事データベース20180716-1319-05

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税金コーナー
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債権機構が微収猶予認める

 茨城農民連で2例目

 6月21日、茨城租税債権管理機構(以下、機構)から茨城農民連の会員Aさん宅に、「徴収猶予許可通知書」が届きました。茨城農民連の会員が機構に徴収猶予を認めさせたのは、昨年6月の県西農民センターに続いて2例目です。

 機構は、県内市町村の税金滞納債権を請け負って、強権的にとりたてる組織です。Aさんは、台風や鳥害などで農業所得が減り、国保税や住民税などを滞納していましたが、市役所と話し合いながらできるだけの支払いを続けていました。市役所からは「借金してでも払ってください」と言われ、実際に消費者金融から借り入れをして、税金を支払ってきました。ところが、消費者金融2社が借りられる上限に達し、昨年2月から5月の支払いができませんでした。

 その後も事情を説明しながらできる範囲で支払いをしてきましたが、今年1月、市役所から「Aさんの税金の徴収を機構に移管する」と連絡があり、Aさんは初めて農民連に滞納している税金の相談をしました。

 ちょうど単組の総会の直前だったことから県連が対応しました。本人の話を聞いてから一緒に市役所に行き、担当者に事情を説明して、機構に移管しないように求めましたが、すでに移管は決まったことだと言われました。

 「差押予告」から5日後に申請

 2月1日に機構から「徴収引受通知書兼差押予告通知書」が届きました。通知書には“2月9日までに234万円を完納しなければ、すでに差し押さえた財産は換価(売却)し、新たな差し押さえもする”ということが書かれていました。すでに差し押さえた財産とは、現在Aさんが住んでいる居宅と宅地のことです。市役所は「機構のほうが、よく相談に乗ってもらえていいですよ」などと説明していましたが、とんでもありません。実際には、機構からの最初の連絡が差し押さえと換価の予告だったのです。

 Aさん夫妻は、県連と一緒に「徴収猶予申請書」を作り、2月6日に機構に行って提出しました。Aさんは、税金などの支払いに追われる心労から精神科に通院していたので、その診断書も添付し、「猶予該当事実」としては、天災や鳥害による農業所得の減少と疾病があることを、詳細な説明文を添付して記載しました。また、「直近1年間における各月の収入及び支出の状況」も、できるだけ詳細に書き出して添付しました。機構の担当者は、最初は冷たい印象でしたが、話をするうちに物腰が柔らかくなり、よく話を聞いてくれました。申請書の結論が出るまでは、換価や新たな差し押さえはしないことを確認しました。

 申請手続きでみえた実情

 実は、Aさんが県連に消費者金融からの借り入れを打ち明けたのは、この収支明細を作る過程で、支出に対して収入が足りなかったことからでした。また、支出のなかに多額の住宅ローンがあり、これを長期に組み替えることで、収支の立て直しが図れることもわかりました。税金の滞納が始まったときに、市役所の職員がすぐに「徴収猶予申請」を勧めて、本人の状況をよく把握していれば、「悪質」と決めつけて機構に移管することはなかったと思います。

 市役所の担当者に「徴収猶予の案内はしていなかったようですね」と聞くと、担当者は「案内する義務はありません」と言い放ちました。後日、地元の議員といっしょに課長と話し合うと、課長は「徴収猶予の案内をしなかったのは、こちらの手落ちでした」と認めました。

 生活と経営の立て直し

 「徴収猶予申請書」には、毎月1000円ずつ納付するという計画を記載していたので、申請書を出した後はその通り納付しています。その振り込み明細を市役所に持参することで、Aさんは国保の短期保険証の交付を受けています。

 6月21日に「許可通知」が届き、Aさんは「本当によかった」と、ようやく一安心した様子でした。住宅ローンの組み替えもできることになり、税金の猶予も得られたので、消費者金融も、ある程度の金額を確実に支払える目途が立てば、弁護士を通して長期返済への組み替えを求めることにしています。Aさんは、農民連を通して新しい販売先も見つけ、農業経営にも希望を感じています。

(新聞「農民」2018.7.16付)
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2018年7月

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