TPPなど新たな貿易協定
種子や農業に大きな脅威
食と農の未来を考える
連続セミナー(2回目)
関連/許さないRCEP(アールセップ) 国民の知的財産奪うな
RCEP(アールセップ)(東アジア地域包括的経済連携)中間交渉の情報収集や対抗行動に来日にした海外NGOをゲストに招き、アジアと世界の種子、食と農の未来を考えようという連続セミナーの2回目が、6月30日に東京都内で開催されました(アジア太平洋資料センターと農民連の共催)。
今回は、種子をはじめ農業や生物多様性などについて調査・情報発信している国際NGO「GRAIN(グレイン)」のアジア地域担当のカルティニ・サモンさん(インドネシア)が、RCEPやTPPなど新たな貿易協定が農業や農民の種子の権利に及ぼしている影響について報告しました。
サモンさんは、「いまなお世界の種子の70〜90%が農民自身によって生産・交換されている一方で、バイエル・モンサントなどの巨大化学・種子企業は、こうした農民の種子の保存や交換を違法化することで、毎年、種子企業から種子を買わせようとしている」と指摘。TPPには農家の自家採種を原則として禁止するUPOV(ユポフ)91条約への参加が義務付けられているなど、新たな貿易協定が小規模農民の種子や農業に大きな脅威であると警鐘を鳴らしました。
コメンテーターとして発言した農民連常任委員で野菜農家の齋藤敏之さんは、農水省が自家採種を原則的に禁止とするよう種苗法を改定する準備を進めているという報道を紹介。トマトの脇芽を取って苗として育てることで、出荷期間を延長するという、これまでは農家の知恵としてよく行われてきたことが、今年から登録品種の場合は禁止されるなど、農業の現場でも育成者権の強化に向けた動きがジワジワと強まっている様子を語りました。
参加者との質疑応答も活発に行われ、「各国政府はなぜ国民を養う食料や農業を多国籍企業に売り渡すようなことをするのか?」、「RCEPなどの新しい貿易協定では途上国にはメリットがないように見えるが、なぜ協定に参加しようとしているのか」、「本来、誰のものでもないはずの在来種を、多国籍企業が特許として登録・独占できるしくみは?」など、本質に迫る質問が相次ぎました。
食健連が緊急抗議行動
日本を含むアジアやオセアニアの16カ国が参加するRCEP(東アジア地域包括経済連携)の閣僚会合が7月1日、東京都内のホテルで行われました。
RCEPは保秘義務がないにもかかわらず、TPP11と同様に国民に内容を全く知らせない秘密交渉で進められています。
農産物を含む物品やサービス貿易については、TPP加盟国である日本やニュージーランド、オーストラリアがTPPと同水準の自由化を求めています。また、ISDS(投資家対国家の紛争解決)条項や製薬・種子企業のための知的財産権の強化などが狙われており、農民だけでなく国民全体の生活にも大きな影響を及ぼしかねません。
全国食健連は緊急の対抗行動「許さない! RCEP・メガFTA『スタンディング行動』」を呼びかけました。緊急の呼びかけにもかかわらず、TPP11反対行動の参加者など約30人が会場前に集結。「NO! NO! RCEP!」と声を上げました。
(新聞「農民」2018.7.16付)
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