本の紹介
「農業・地域再生とソーラーシェアリング」
ソーラーシェアリングを農業と地域再生に活用していくうえでの一助となる本が、このほど出版されました。ソーラーシェアリングとは、農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置・発電し、下で作物を栽培する「営農型発電」のこと。
著者は、地域農業や農村社会学などを研究してきた明治大学名誉教授の田畑保さんです。農村調査実習のゼミ活動の一環で学生と一緒に福島県南相馬市を訪ねたのを皮切りに、日本各地の先進事例を取材し、本書にまとめました。
本書では、農家が個人で経営に取り入れた事例や、集落営農での取り組み(福島県白河市、高知県四万十市)、福島原発の事故後の農業と地域の復興に小規模ソーラーシェアリングを生かそうという「福島県飯館電力株式会社」、そして新聞「農民」にも何度も登場した、大規模ソーラーシェアリングと、地域農業の後継者育成をつなげた千葉県匝瑳(そうさ)市の「市民エネルギーちば」と「スリーリトルバーズ」など、全国7つの先進事例を紹介しています。
後半では、農村での、とくに中山間地域での農業・地域再生に、ソーラーシェアリングが大きな可能性を持っていることを、農業と発電事業の担い手などにも触れながら整理するとともに、全国的・制度的な見地からも普及に向けた課題を提言しています。
ソーラーシェアリングを農業・地域再生の力とするには、「農業が主体であること」が何よりも大切であること、そして市民や地域で連携して進めれば農家だけでは困難な課題も乗り越えられることを、さまざまな実例を通して、知ることができる一冊となっています。
著者 田畑 保
出版社 筑波書房
▼1400円+税
▼四六判、140ページ
(新聞「農民」2018.7.2付)
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