農家の税金対策
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青色申告について
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青色申告の特典
青色申告の特典は、『税金対策の手引き』22〜23ページにあるように、(1)専従者給与が引ける(2)青色申告特別控除が引ける(3)赤字を繰り越せる(4)特別償却ができる(5)現金主義を選択できる(6)引当金を経費にできる(7)収入保険に入れる――などがあります。
収入保険は、基準額が年々下がる恐れがあるなど、十分な制度ではありませんので、加入にあたっては、自分の経営に照らして慎重に検討する必要があります。
青色申告を選ぶ人の多くは、白色申告の専従者控除よりも大きな金額で専従者給与を引けることに大きなメリットを感じていることと思います。
青色申告をしようとする人は、「青色申告承認申請書」を、最初に適用しようとする年分の年(青色申告書を提出する年の前年)の3月15日までに税務署に提出します。1月16日以降に開業または事業承継した場合は、開業または事業承継した日から2カ月以内に提出します。
「専従者給与」で大きなメリット
事業専従者とは、1年のうち6カ月を超える期間その事業に従事した15歳以上の親族です。専従者控除または専従者給与を適用すると、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除を適用することができません。
白色申告の事業専従者控除の金額は、『手引き』21ページにある通り、専従者控除前の所得金額を「専従者の人数+1」で割った金額ですが、配偶者は86万円、その他の親族は50万円が上限です。
それに対して、青色事業専従者給与は、税務署に届け出した金額を上限として給与額を控除できます。専従者控除では所得が残り、税金がかかる場合はメリット(利点)があります。予想外に売り上げが増えることも想定して高めに届け出しておきます。
青色申告者が専従者給与を控除するためには「青色事業専従者給与に関する届出書」を「青色申告承認申請書」と同様に、最初に適用する年の3月15日までに提出する必要があります。給与額を引き上げる場合や専従者に変更がある場合は、遅滞なく「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出します。
専従者給与の相当額
専従者給与額が高いほど、農業所得は低くなりますが、どんなに高い金額でも認められるわけではありません。「青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること」とされています。業務の内容、事業規模や収益、他の就業者とのバランスなども考慮しましょう。また、専従者給与が一定金額を超えると、様々な検討課題が出てきます。
98万円の壁と93万円の壁
専従者給与が103万円を超えると、専従者に所得税がかかる場合があり、98万円を超えると、住民税の所得割がかかる場合があります。
専従者が住民税非課税になるためには、給与所得のみで扶養等がない場合、給与収入が1級地で100万円、2級地で96万5千円、3級地で93万円以下である必要があります(『手引き』49ページ)。
専従者給与を1人につき月8万8千円以上支払うと事業主は源泉所得税を徴収しなければなりません。
農業等の課税所得が195万円を超えたら
農業申告者の課税所得(所得控除を差し引いたあとの金額)が195万円を超えて10%の税率になるときは、専従者が多少の税金を支払っても、合わせると節税になる場合があります。ただし、専従者が住民税非課税でなくなる場合の影響は検討する必要があります。
(新聞「農民」2018.7.2付)
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