「農民」記事データベース20180702-1317-05

参議院内閣委員会で意見陳述

北海道農民連委員長・山川秀正さん


TPP11で北海道農業の
減収額は150億円以上に

 6月19日の参議院内閣委員会でTPP11に対する参考人質疑が行われ、北海道農民連の山川秀正委員長が意見陳述しました。山川委員長の陳述大要を紹介します。

画像  現場で農業を行っている農民の立場から意見陳述します。私は、北海道音更町で畑作を営んでいます。経営内容は、13ヘクタールの小麦、大豆5ヘクタール、てんさい6ヘクタールなど40ヘクタールを耕作しています。

 いま北海道の販売農家戸数は約3万8000戸で、私が農業を継いだ40年前は13万5000戸でしたから、約10万戸減少しました。生き残った農家は、いわゆる「つわもの」ですが、TPP11でさらに大きな網のふるいにかけられるのではないかと、多くの農家が懸念しています。

 政府の試算でも、TPP11によって農産品だけで、620億円の関税収入の減少が見込まれ、その内訳は、牛肉270億円、国家貿易によるマークアップ(農産物輸入格差のため政府が課す調整金)は麦で227億円※1、乳製品25億円、砂糖調整品16億円となっており、北海道農業の減収額は150億円以上になると予測されています。

 関税やマークアップの財源によって、牛マルキン(肉用牛肥育経営安定特別対策事業)、麦・てんさいの数量支払い、牛乳・生乳の生産者補給金などが実施されてきました。私にとっても経営に大きなウェートを占める小麦のマークアップが45%削減され小麦の販売価格がその分引き下げられるのではないかと危惧しています。

 TPP12の牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限)や乳製品の低関税輸入枠を凍結しないまま承認されており、その影響は避けることはできません。

 農家は、TPPを前提に体質強化策が講じられていますが、支援の対象が規模拡大一辺倒であり、現状維持で経営を続けようとしている農家が支援を受けることはありません。

 規模拡大一辺倒では限界があり、地域が疲弊しています。さまざまな形態の農業経営が生き残ってこそ、北海道の地域社会、地域経済は維持されます。

 北海道農業はいま、「農業を輸出産業に」とのかけ声のもと、その典型としてもてはやされています。しかし、それは、食料自給率38%の国がめざすべき方向でしょうか。

 EU(欧州連合)では昨年11月、共通農業政策のなかで、家族農業経営、食料の安全保障、農業の多面的機能の維持、そして「農業は完全な自由貿易下には耐えられない部分がある」ことを強調しています。政策の転換、国民的議論が求められているのではないでしょうか。

 最後に、4月に主要農作物種子法が廃止されましたが、種子法の復活を求めます。北海道では、パン向け秋まき小麦「キタノカオリ」の採取が困難となり、生産が危機に立たされています。


【訂正】 7月9日号にて、以下の訂正がありました。
 7月2日付(1317号)2面「参議院内閣委員会で意見陳述」の記事中、「国家貿易によるマークアップは麦で270億円」とあるのを、「227億円」※1に訂正します。
 2018年7月16日、訂正しました。

(新聞「農民」2018.7.2付)
ライン

2018年7月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2018, 農民運動全国連合会