農家の税金対策
(10)
総合譲渡所得について
土地や建物などの不動産を貸して賃貸料を受け取った場合は不動産所得になりますが、不動産などの資産を譲渡して得た所得は譲渡所得として申告します。
土地・建物等の譲渡や株式等の譲渡については、特別の税率が適用されるため、一般の所得(総合課税の所得)とは区別して、分離課税の譲渡所得として税額を計算します。これについては、次回に説明します。
土地・建物等・株式等以外の、機械装置や工具器具備品などの減価償却資産、土石(砂)、生物、樹木(山林の立木以外)、骨とう品、貴金属、ゴルフ会員権などの資産を譲渡した場合は、総合課税の譲渡所得として所得金額を計算し、申告書Bの第1表にある、農業所得など、その他の総合課税所得と合算します。
総合譲渡所得の計算
『税金対策の手引き』27ページにあるように、総合譲渡所得金額の計算は、短期譲渡と長期譲渡で違います(別項)。総合譲渡の場合、取得の日から譲渡の日までの期間が5年以下なら短期で、5年を超えるものは長期です。
短期譲渡の場合、譲渡収入(売却金額)から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡益から特別控除を差し引いた金額が短期譲渡所得になります。取得費とは、取得に要した費用と改良費の合計から償却費相当額を差し引いた金額です。特別控除とは、50万円と譲渡益のいずれか低い金額です。
長期譲渡の場合、譲渡益から特別控除を差し引いた金額の半額が長期譲渡所得になります。
機械の買い替え時の下取り金額
農業用機械を買い替えるときに、使っていた機械を下取りに出す場合、下取り分を差し引いた金額を支払うことがありますが、このときの下取り金額は総合課税の譲渡所得の収入金額として扱います。買った機械の減価償却費を計算するときは、下取り分を差し引く前の金額を取得費とします。下取り分を引いた金額を減価償却の取得費にして済ませてしまうと、間違いであるだけでなく、特別控除等の適用ができずに損をしてしまいます。
消費税の課税事業者であれば、下取り金額は消費税の課税売り上げになります。この漏れを狙う税務調査もありますので、注意が必要です。
牛や豚の売却が譲渡所得の場合
農業者が牛や豚などを反復継続して譲渡する場合の所得は農業所得ですが、事故や疾病等の突発的な事情等、偶発的な理由で売却した場合など一定の場合には、譲渡所得として差し支えないことになっています。特別控除の適用で有利になります。
(税金対策部)
総合短期譲渡所得=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除50万円
総合長期譲渡所得={収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除50万円}÷2
|
(新聞「農民」2018.5.21付)
|