「農民」記事データベース20180430-1309-12

カツオ漁と食文化守って
漁村の未来をつくろう

全国のカツオ産地・自治体が
カツオまつりサミット

関連/うまいもん市に5000人


深刻化するカツオの不漁
小規模・家族漁業に支援を

 本格的な初カツオシーズンを前に、カツオ漁が盛んな全国の自治体が集まり、初めての「全国カツオまつりサミット」が、3月24、25の両日、和歌山県すさみ町で開かれました。和歌山県内の各市町村と鹿児島県、宮崎県、高知県、千葉県のカツオ産地の共同開催です。

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シンポ会場。和歌山県知事をはじめ300人が参加

 和歌山県内外 300人参加

 サミット初日は、「カツオとともに生きる地域未来づくり」をテーマに、周参見中学校体育館で「食と漁の地域活性化シンポジウム」が開かれ、県内外から300人が参加しました。

 和歌山県はカツオ漁・鰹(かつお)節の発祥の地で、その技術を江戸時代に紀州漁民が各地に伝えたことで、全国にカツオ漁と鰹節産業が広がりました。今でも太平洋沿岸各地ではカツオ漁が盛んで、カツオは地域漁業・地域経済を支える重要な魚となっています。カツオ産地では近年、地域活性化のためにブランド化や魚食観光をテーマに「カツオまつり」が盛んに行われています。

 しかし、その一方でカツオの不漁が深刻化しており、年によってはカツオまつりが中止に追い込まれる地区もあり、地域経済にとって大きな不安材料となっています。そこで、江戸時代から続くカツオ漁の歴史と文化をふり返り、カツオ資源と地域漁業の大切さを広く訴える目的でシンポは企画されました。

 カツオ資源再生を国民的課題に

 開会で、岩田勉すさみ町長は、「国民的な課題としてカツオ資源を守っていかなくてはならない」とあいさつ。続いてシンポ企画者でカツオ研究者の二平章さんが江戸時代からのカツオ漁の歴史をふり返り、カツオつり漁業が漁村経済を支えてきたこと、また近年、熱帯域における国際的な大規模まき網漁による過剰漁獲が日本へのカツオ北上量を減少させていること、カツオ資源の再生には熱帯まき網に対する国際的規制が必要であること、地域漁村の活性化のためには小規模・家族漁業への支援が必要であることなどを訴えました。

 次に、竹内太一土佐料理店代表が、日本にカツオを取り戻そうと立ち上がった高知県民会議の取り組みを紹介。カツオ産地が連携してカツオ資源保護を国内的にも国際的にも訴えていこうと呼びかけました。

 続いてのトークセッションでは、鹿児島県枕崎市、宮崎県日南市、高知県土佐清水市・黒潮町・中土佐町、和歌山県すさみ町の漁業関係者や町長らが、各地での創意ある「カツオまつり」や「カツオでの地域おこし」の事例を報告。地域漁村の活性化のために奮闘する人びとの姿を楽しく紹介しました。

 また、トークセッションの最後に登壇した千葉県沿岸小型漁船漁協の鈴木正男組合長は、全国から参加したJCFU全国沿岸漁民連絡協議会の役員らを壇上で紹介しながら、地域再生のためには小規模・家族漁業を守る取り組みが大切であることを訴えました。

 シンポの終わりには、「カツオ資源の再生をめざし、カツオ漁と伝統の食文化を守って漁村の未来をつくろう」との「和歌山アピール」が採択されました。


うまいもん市に5000人

元漁師の指導で一本釣り体験も

 翌25日にはすさみ漁港を会場に、「全国カツオまつりうまいもん市」が開催され、カツオ産地や和歌山県の農協、漁協など33の販売テントがならびました。カツオやマグロ、クジラ、サンマ、カキ、イノブタなどご当地グルメの店はどこも大繁盛で、会場は県内外から5000人の家族づれでにぎわいました。

 千葉県沿岸小型漁協の販売テントには、北海道、岩手、和歌山の沿岸漁民連の仲間が集まり、サンマのつみれ汁づくりを応援。用意した300食があっという間に売り切れになりました。カツオ一本釣り体験コーナーには、高知県土佐清水市から元カツオ一本釣り漁師の植杉康英さんが、長いさお釣り道具を持って参加し、子どもたちを指導しました。子どもたちは親の声援を受けながらカツオの形をした3キロ、6キロ、8キロの重りを竿で釣り上げて、一本釣りの醍醐味(だいごみ)を味わっていました。

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千葉沿岸小型漁協テントで「サンマつみれ汁」を提供する沿岸漁民連の女性たち

(新聞「農民」2018.4.30付)
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2018年4月

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