ふるさと
よもやま話
島根県農民連
執行委員 田食(たじき) 道弘
過疎化・人口減進む農山村
小中校統廃合が大きな問題
かつてどの田舎でもたくさんの子どもたちが育ち、教室は目いっぱいの児童であふれかえっていました。農政の後退や地方切り捨ての政治が続き、中山間地の農村では、子どもの数が激減しています。
今、私の住む島根県奥出雲町では「学校再編」「統廃合」が、町民の大きな話題に急上昇しています。
全保護者対象に意向調査を実施
3月の町議会初日の町長施政方針で、耐震化が急がれるなか、町内2番目で約100人の児童数を抱える「三成小学校」の建て替え設計に着手し、統廃合、義務教育学校への移行を視野に入れ、中学校敷地内への移転について検討することを突然表明しました。
8年前、町教育委員会は、小学校の学校再編に関して基本方針を定め、児童15人以下の極小規模校は早急に学校再編を行う必要があること、また複式学級(2つ以上の学年をひとつにした学級)のある小規模校にも学校再編の必要があるとしています。
昨年秋、町教育委員会は中学校までの全保護者対象にアンケートを実施し、学校再編への意向調査を行い、統廃合への関心を高めています。
町内10校の小学校のなかで、昨年度末で児童15人以下は1校のみ、10年後の予測では2校です。また複式学級があるのは6校です。
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耐震化を機に学校再編?(奥出雲町) |
文科省の方針にいろいろ問題が
過疎化、人口減少が進む奥出雲町の公共施設再編計画で、「学校数は縮小する」としています。
昨年度で550人弱の児童数が10年後には430人余に減少すると予測され、現在の2つの中学校区に集約。義務教育学校を開校する方向を考えているようです。
国の教育費削減政策のもと、2016年度から「義務教育学校」制度が新設され、全国で開校が検討されています。
9年制で、特色あるカリキュラムを柔軟運用するなどと文科省は宣伝文句にしていますが、小学校段階から複数の学校制度、教育課程が設けられ、教育の機会均等が崩されること、小学校高学年での主体性の成長が損なわれるなど多くの問題点が指摘されています。
小規模学校でも充実した教育が
文科省の学校統廃合の「手引き」には、「小中一貫教育」を一定の学校規模を確保するための工夫例として明記しているようです。
最近の学力テストでは、県下平均以上の成績に上昇し、学力面では、皮肉にも文科省や町長が思っているような「小規模では学力が伸びない」のでなく、かえって充実した教育が実現しています。
いずれにせよ過疎の進む全国の農山漁村では学校再編が大きな問題です。統廃合により、さらに過疎化に拍車がかかる恐れがあります。農業後継者の確保にも関わる重大な問題です。
(新聞「農民」2018.4.16付)
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