ふるさと
よもやま話
大分県農民連会長
佐藤隆信
家族農業で農地を守っていくには
注目される姫島村の取り組み
農産物販売だけでは生活できず
農村地域でこれからも家族農業で農業を守り続けようとすれば、大変です。
耕作面積が1ヘクタール以下の水田や畑では農産物の販売だけでは、生活はできません。昭和30年〜40年の時代は、農村の近くに建設業が多くあり、また農民も年齢も若かったので、半農、半漁か半労働者で所得を上げることができました。
現在は公共事業も地方では少なく、また農民は高齢化して建設業にもいけません。農業以外の所得は、国民年金だけです。このような状況をみて親は、子どもには農業をさせないように学校に行かせ、子どもも農業よりも他の仕事を選びます。
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トマトハウスの中で佐藤会長 |
家族農業守るため地方公務員に
農業で、労働者並みの生活ができれば農業をする人も増えると思います。今の農業は、そんなに労働もきつくありません。私の地域では、高糖度のトマトをつくっているので若い人が会社を辞めてトマトづくりに来ています。
しかしこれは一部の地域だけでできることで、全国でできるかと言えば大変難しいと思います。
私は全国的に家族農業を守ろうとするならば、農家を地方公務員にして所得を補償し、農地が小面積でも生活でき、農村地域を守るために公務員にいろいろな仕事をしてもらうようにすればいいのではないかと思います。
ワークシェアリングで活性化を
なかでも注目されるのが、大分県の小さな漁業の島、姫島村の「ワークシェアリング」の取り組みです。姫島村は人口約2200人で地方公務員は約180人。12人に1人が公務員ということになります。そのうち、診療所、フェリー、高齢者生活福祉センター、保育所、清掃センター、幼稚園、簡易水道、給食センターなど現場の職員が約7割を占めます。
「ワークシェアリング」は、昭和40年代前半に、過疎化、人口減対策として若者を村に残すための取り組みとして始められました。
「職員の給与を低く抑えて、できるだけ多くの職員を雇用する」という雇用施策をとって給料は他の地方公務員の約70%。最近では、さらに多くの人を雇用する手段として、主に主婦を対象に、月3分の2の勤務日数で、給与も3分の2とする雇用形態もとっているようです。
村長も全国町村会の会報で紹介
姫島村の藤本昭夫村長は、全国町村会の会報のなかで、「昨今の地域を取り巻く厳しい社会経済情勢の中で、これからも『ワークシェアリング』を大事にしながら、地場産業の振興と雇用の場の創出を図るため、水産業と観光の島づくりに、村民が一致協力してがんばっていきたい」と述べています。
私たちもこうした取り組みに注目し、農水省などに提案していきたいと思います。
(新聞「農民」2018.3.19付)
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