北陸豪雪
被災地を行く
苦悩する被災農民を激励
石川県で17年ぶり、福井県では37年ぶりの北陸地方の大雪から1カ月が経過しました。農民連は、笹渡義夫会長が3月1、2の両日に現地入りして両県連会長とともに被災者を激励し、被害の状況を調査しました。笹渡会長のリポートを紹介します。
倒壊ハウス 各地に広がる
被害を機に農業断念の動きも
石川県で大雪で倒壊したビニールハウスは1628棟(2月28日現在)、福井県で901棟(同26日現在)に及びます。近づく育苗に再建が間に合うのか、被害を契機に経営を断念する動きがあるなど、農家に苦悩が広がっています。
石川県内有数の施設園芸地域である金沢市打気地区。広大に広がるビニールハウス群のなかに、無残に倒壊したハウスがいくつもあります。
同地区で40アールの施設で加賀野菜の太キュウリなどを生産する、就農9年目の中村圭吾さん(36)のハウスも2棟倒壊しました。
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中村さん(中央)から被害状況を聞く宮岸美則・石川県連会長(右)=金沢市 |
1日も早く自力で撤去して再建したいという中村さん。建て替えには最低でも1棟あたり100万円、撤去を業者に依頼すればさらに十数万円はかかります。注文が殺到するなかで資材は間に合うのか、業者は対応できるのかなど、いくつも課題があるといいます。
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雪の重みで倒壊したハウス(越前市) |
14年豪雪被害地に
国の「支援事業」で、農民を助成
“9割補助でればやる気でる”
2014年に関東甲信地方を襲った豪雪被害の際、政府は「被災農業者向け経営体育成支援事業」を発動し、国・県・市町村を合わせ再建費用の9割を農家に助成しました。撤去は農家負担なしで市町村が実施しました。中村さんは、「そうなったら助かる」と目を輝かせます。
福井県越前市で電照菊を生産する玉埼清二(きよじ)さんは、昨年の21号台風で2棟倒壊したのに続いて、今回の大雪でも3棟のビニールハウスを失いました。被害額は、ハウスの中の菊を含めて約1000万円にのぼります。
玉崎さんは「共済は加入しているけど、条件があってほとんど使い物にならない」「県の500万円を限度にした融資対策では負債が増えるだけだ」「9割補助があればがんばれる」と、国の制度発動に期待を込めます。
関東甲信豪雪(2014年)では
ハウス再建に9割を補助
2014年2月、普段はあまり雪の多くない関東甲信地方を中心にした豪雪によって全国で約8万5000棟の農業用ハウスが倒壊。農水省は、農民連や自治体などの強い要請を受け、「被災農業者向け経営体育成支援事業」を実施しました。
この制度は、農業用ハウスの建て替えを行う農家の費用を国県市町村が9割補助するという画期的なものでした。
また倒壊したハウスの撤去についても農家の負担なしで行われました。
こうした対策によって約3万棟の農業用ハウスが倒壊する甚大な被害となった群馬県では7割が再建したのをはじめ、各地で失望した農家が経営を再建する大きな後ろ盾になりました。
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しかし、今回の豪雪被害にたいして、農水省は現時点で「被災農業者向け経営体育成支援事業」の実施に踏み出していません。
今回もこの支援事業適用へ
政府・自治体・JAなどに働きかけを
一方、2月22日の衆院予算委員会で日本共産党の藤野保史(やすふみ)議員が、北陸地方を中心にした豪雪被害対策について、「被災農業者向け経営体育成支援事業」の実施を要求しました。
質問に小此木防災担当大臣は、今回の被害は、雪が普段はあまり降らない平野部での被害であるとの認識を示し、必要な支援策を総合的に講じていきたい旨の答弁を行いました。
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被災を契機に離農に追い込まれることは、絶対にあってはなりません。
農民連北陸ブロックは北陸農政局への要請行動を計画し、農民連本部も繰り返しの農水省への要請を行います。被災地の知事、市町村長、JAなどに「制度の実施を要請してほしい」と働きかけましょう。今開かれている議会に意見書を求める請願を行いましょう。
(新聞「農民」2018.3.19付)
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