ふるさと
よもやま話
岐阜県農民連会長
小寺 徹
富有柿発祥の地での柿作り
富有柿発祥の地、岐阜県瑞穂市は、長良川と揖斐川にはさまれ、岐阜市と大垣市の中間点にあり、濃尾平野の北部地域になります。
この地域は、古くから柿づくりが盛んでした。江戸時代中頃に全国規模で調査・集約された『産物帳』には、美濃国で49種と最多の品種が記帳されていました。これは、この地域が、柿づくりに適した風土であり、先人の努力で富有柿発祥の地となったのです。
富有柿世に出した福嶌才治さん
富有柿は御所系の完全甘柿、果実は丸に近い四角で、果皮はすべすべしていて光沢があります。産地により微妙に色や形に違いがあります。果肉はとろけるような柔らかさと甘みがあり、果汁が多いのが特徴です。
今から約120年前に甘柿の王様である富有柿が、瑞穂市居倉の地で、福嶌才治(ふくしまさいじ)さんの努力により見いだされました。
それ以前は、居倉御所と称され、形状、風味ともに優れた柿で、話題になっていました。1857年に小倉初衛が栽培を始めた御所系統の柿の木がその起源とされ、その木を福嶌さんが、十数年も研究しながら、県内の各種の品評会に出品し、1等賞を獲得。高い評価を得て、世に認められるようになりました。
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福嶌才治さんへの感謝の言葉を述べる小寺さん=2015年10月18日(瑞穂市ホームページから) |
富有柿命名の由来
明治31(1898)年、県主催の柿展覧会に出品するときに、福嶌さんは富有柿と命名して出品しました。
その名の由来は、中国の古典『礼記(らいき)』の一節「富有四海之内」の言葉を引用して、「徳があればその富は四海の内を有(たも)つ」という意味で、「素質が備わっているものは、自然に全国に広まるよう天の助けがある」と解説されています。
富有柿発祥の地でみずほ感謝祭
私は、瑞穂市の柿振興会の会長を務めています。会員数は240人、栽培面積は約70ヘクタールです。
2015年には、会員さんから富有柿を見いだした福嶌さんへの感謝と、発祥の地をアピールする感謝祭を実施するよう提案がありました。
柿振興会の役員会で実施することを確認し、県、市、JAぎふの協力で、実行委員会を設置し、開催の準備を進めました。
こうして2015年10月18日に感謝祭が開かれました。棚橋敏明市長が献花し、来賓あいさつ。「日本の柿づくりに画期をもたらした富有柿」の演題で、今井敬潤さん(岐阜女子大学非常勤講師、学術博士)が記念講演を行いました。
私も実行委員長としてあいさつし、富有柿の母木がある「富有柿発祥の地の碑」と「福嶌才治さんの碑」の前で、福嶌さんへの感謝と発祥の地にふさわしい柿づくりをめざしてがんばることを誓い合いました。
(新聞「農民」2018.3.12付)
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