農家の税金対策
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農業所得の計算
「収穫基準」について
確定申告書を見るとわかるように、事業所得は「営業等」と「農業」に分かれます。つまり、農業所得は事業所得の一種です。
所得税法27条2項に「事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする」とあるように、事業所得の計算の基本は共通していますが、収支内訳書が「農業用」と「一般用」に分かれているように、農業とその他の事業所得では、勘定科目も大きく違います。
勘定科目ごとの詳しい説明は、「農家が得する税金コーナー」で紹介しましたので、ここでは、農業所得に特徴的な「収穫基準」について説明します。
収入金額の計算
農業以外の事業所得の収入金額は、販売金額については「その引き渡しがあった日(所得税基本通達36―8)」、つまり納品した日の属する年分の収入とすることになっています。
一方で農業は、所得税法41条で、農産物の収入金額は、「収穫の日の属する年分…に算入する」とされています。
そこで、収穫はしたけれどもまだ販売していないものについては年末に、庭先における裸値(包装・販売経費を除く農産物の時価)で期末棚卸高として収入に計上します。その棚卸高は翌年の期首に繰り越します。棚卸ししたものを翌年に売ったときは、販売金額を収入に算入したうえで、期首の棚卸高を差し引いて翌年の収入金額を計算します。
ただし、法令解釈通達「農業を営む者の取引に関する記載事項等の特例について」(平18課個5―3)により、生鮮野菜など収穫から販売までの期間が短いものについては収穫基準の記載や棚卸しを省略して販売基準の記載で差し支えないとされています。また、穀類以外の農産物については、数量が僅少なものは棚卸しを省略できるとされています。
穀類の棚卸しについては、多くの農家が「棚卸高」に計上せず、その年の販売単価で「販売金額」に計上している人が多いようです。正規の記帳とはいえませんが、計算結果はほぼ同じになるので、これまでの税務調査でも問題にされていないのが実際です。
必要経費の計算
その年に収穫した農産物の原価や販売経費をその年の経費にするのが基本的な考え方ですが、実際には個々の原価計算は困難ですので、まだ使っていない資材等を期末棚卸高として差し引き、前年からの繰り越しである期首棚卸高を算入して調整します。使った資材でも年末に未収穫の農産物に使ったものは棚卸高に算入します。
ただし、同通達により、「毎年同程度の数量を翌年へ繰り越す場合には、その棚卸しを省略しても差し支えない」とされており、多くの農家が棚卸しを省略しています。
「現金主義」による計算
「収穫基準」や「販売基準」での記帳方法を「発生主義」といいますが、現金が動いたときに収入や経費に計上する「現金主義」による記帳方法もあります。現金主義での計算が認められるためには、前々年分の事業所得と不動産所得(専従者控除または専従者給与を差し引く前)の合計金額が300万円以下の青色申告者であり、その年(申告期限の前年)の3月15日までに税務署に届け出することが必要です。
(税金対策部)
(新聞「農民」2018.2.5付)
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