「農民」記事データベース20180129-1296-07

農家が得する
税金コーナー
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農民連の『税金ノート』の効用と
上手な記帳方法について
(下)

 上手な記帳にむけて――
 経費科目ごとの注意点

 『税金ノート』は、経費科目のページごとに、その経費の計上に際しての注意点が具体的に記載されています。この注意書きを参考にしながら記帳していきます。ここでは、経費科目で主だったことを述べていきます。

 (1)雇人費…税務署は近年、人件費に対する源泉徴収義務をたてに調査に入ってきます。給与(青色専従者給与を含む)を支払っている事業者は、法律上、源泉徴収義務者になります。源泉徴収税の取り扱いに留意しましょう。なお、シルバー人材などは、作業委託なので源泉徴収は不要で、経費項目も作業委託費に分類されます。

 源泉徴収税は、(甲表)(乙表)(丙表)の3種類の税額計算法があり、給与支払いのケースに応じて対応します。

 (甲表)は、雇い入れる人が記名、捺(なつ)印した「扶養控除等の申告書」を事業者が保管(税務署への提出は不要)している場合で、雇い入れる人一人につき給与支払額が月額8万8000円未満なら源泉徴収額はゼロ円になり、有利です(詳細は『手引き』参照)。

 『税金ノート』を使って、雇い入れた人ごとに、月々の支払額や源泉徴収額を記帳していきましょう。

 また、雇人費では、食べてもらった茶菓子代や食事代も雇人費のまかない費の欄にもれなく書き入れましょう。

 (2)租税公課…この科目で漏れやすいものは、家族が使用する車両関連費用(自動車税、任意保険料、JAF会費など)です。また他の経費項目としてガソリン代や修理代、車検代、減価償却費もあります。車両を少しでも農業に使用していたら、すべて使用割合に応じて按(あん)分し、経費に計上しましょう。

 仮に車両の名義が事業主以外の家族のものであっても、その家族に使用料を払わず農業などのために使用している場合は、事業主の経費として計上できます(所得税基本通達56―1親族の資産を無償で事業の用に供している場合)。そのほか各種団体の会費や町内会費なども忘れずに。

 また、消費税課税事業者として納付した消費税額は、全額経費となります。ただし、県市民税など住民税は、所得税の経費には計上できません。

 国保税、介護保険料などは、社会保険料控除として確定申告書に直接記入します。

 (3)農機具…冷蔵庫、洗濯機、扇風機など家庭用器具なども作業場など事業関係で使用する場合は計上します。こうした器具を事業にも生活にも使用する場合は、按分して経費計上します。

 (4)農業用衣料費…スーツなども農業関連の表彰式など農業経営に関するものに使用した場合、按分します。

 (5)研修費…農家は観光を兼ねた農業視察旅行によく出かけます。これも按分をして農業経費に計上します。どこに、いつ、何を見に行って、いくらの費用がかかったかメモをしておきましょう。視察先の写真なども有効です。

 (6)接待交際費…冠婚葬祭、手土産など相手が農家でも取引先でも事業に関係する付き合い上のものはすべて計上します。

 (7)通信費…家族の携帯電話やインターネット料なども事業に使用していたら按分して計上します。

 (8)減価償却費…本宅は、事業にとって事務所や作業場の役割を果たしているスペースがあります。面積比などで事業按分します。これまで減価償却していなくても、対象となる減価償却資産を過去にさかのぼって計上します。

 木造住宅であれば、耐用年数は22年なので、新築、改造した年から22年間は減価償却が可能で、途中からでも残りの年数を減価償却することができます。

 車両も、減価償却の対象です。減価償却費については、『税金ノート』の記帳欄以外に計算ソフトを利用して減価償却表を作成している県連もあります。お問い合わせください。

 (9)その他の経費…『税金ノート』に掲載されていない科目は、最後の欄に自分で科目を作って計上してください。減価償却資産を耐用年数が終了するまでに廃棄した場合は、残存価格を除却損として扱います。また、友人の農産物を分けてもらって販売したときは仕入れとして処理しましょう。

(新聞「農民」2018.1.29付)
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2018年1月

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