世界の潮流は小規模・家族農業よびかけ人代表 関根佳恵さんの報告
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世界の農業経営の72%は1ヘクタール未満の小規模経営ですが、食料安全保障や食料主権を支える基盤になっています。
また、小規模・家族農業には、農村地域における土壌保全、生物多様性の維持、地域経済の活性化と雇用創出、社会的不平等の是正、景観形成、文化の伝承等の多面的機能の発揮も期待されています。
しかし、急速な市場のグローバル化、農産物・食料の国際価格の乱高下、気候変動や災害、企業や国家による大規模な土地収奪、多国籍企業による種子の囲い込みなどに直面し、小規模・家族農業は危機的状況に置かれています。日本で起きている農林水産業者の減少と高齢化、農山漁村の過疎化、食料自給率の低下も、現在の農業・食料生産システムが持続可能でないことを示しています。
将来にわたって、いかに食料を安定的に供給することができるかが世界的な課題になるなかで、小規模・家族農業を支援しなければ飢餓問題の解決は難しいということに、国際社会も気づきはじめています。
時代遅れだと思われていた小規模・家族農業が、持続可能な農業の実現という目標に照らして、実は最も効率的だという評価がなされるようになりました。2014年に国連食糧農業機関(FAO)の事務局長は「家族農業以外に持続可能な食料生産のパラダイムに近い存在はない」「国や地域の開発において家族農業を中心とした計画を実行する必要がある」と述べています。
小規模・家族農業は、本来、食料生産と農業の多面的な機能の発揮に重要な役割を果たしていますが、その機能はさまざまな困難によって十分に発揮されていません。また、世界でも日本でも、政策的な支援を十分に受けてきたとは言えません。
さらに、国連の持続可能な開発目標(SDGs・2016〜30年)の中でも家族農業の役割が位置付けられています。
こうして、2014年の国際家族農業年の成果を引き継ぎながら、さらに家族農業を支援する国際的な枠組みづくりと各国における取り組みを促進するために、世界では国際家族農業年を10年間延長するキャンペーン活動「国際家族農業年+10」が展開されるようになったのです。
さらに、国際農民組織ビア・カンペシーナが提唱し、国連人権委員会で議論されている「小農民と農村で働く人々の権利宣言」に反対しており、生物多様性や地球温暖化の防止などアグロエコロジー(生態系に配慮した農業)についても、背を向けています。むしろ、食と農の工業化をいっそう進める政策をとっています。
私たちは、政府に対して、小規模・家族農業やアグロエコロジーの推進を求め、支援の制度化や予算化、法整備等を求める必要があります。日本は国内に小規模・家族農業を多く抱え、有機農業、自然農法、産地と消費者との提携等でも世界の見本となってきました。
日本で、現在の農政を変え、世界の潮流とひとつになれば、大きな国際貢献にもなるはずです。
[2018年1月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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