「農民」記事データベース20180122-1295-06

ふるさとよもやま話

広島県農民連委員長
木戸菊雄

 今回から、全国の都道府県農民連の会長、委員長、その他役員による連載「ふるさとよもやま話」がスタートします。


お地蔵さんと氏神さまに
何十年も「守り」「守られ」

 大学の地蔵さん調査に参加して

 年末に、広島県立大学の教授と学生さんが地域のお地蔵さんの調査に来られ、地域の方と参加した。

 60戸余りの私の集落には、8つのお地蔵さんがある。昭和の初めに、9つの集落に四国八十八ヵ所巡りにあやかって88体のお地蔵さんが、古くからある石仏や石塔と一緒にまつられた。「お地蔵さん巡りのウオーキングコースを作ったら、地域の活性化につながるのでは」との意見もあっての、一石二鳥の調査協力だった。

 地域の身近な歴史を聞けた

 歩いての道中、地域の歴史に詳しい方が、「このお地蔵さんは、本家四国の何番札所の何寺に当たる」等と、教えてくださる。

 また、江戸時代に建てられたお堂に書かれた名前を見て、「この名前の方はわが家の先祖で、当時の大工道具もまだ蔵の中にある」こと、お隣の久井(現三原市久井町)で開かれていた西日本有数の牛市の、牛を追って通る集積コースにこの地域がなっていて、旅籠(はたご)が何軒もありにぎやかだったことなど、身近な歴史についても聞けた。

 お地蔵さんの中には存在を忘れられ、ひっそりと立っているものもある。私の近所のお地蔵さんは、供養塔と一緒に立っていることもあり、地域の女性が心を尽くして何十年も花を絶やさずお世話をしてくださっている。そこを通ると守られている気持ちがする。

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神社は地域の人たちが懸命に維持し運営しています

 使用されてない段々畑も発見

 この調査の中で、私の集落の神社(青水菅原神社)に合祀(ごうし)された神社のあった場所や、お寺もあったことがわかった。

 山の頂上にある菅原神社は、地域の氏子の私たちが懸命に維持運営している。参道が急過ぎて参拝もできなくなる人も多くなってきたので、いま新たに車の通れる参道を地域で協力して造っている。現在は竹の伐採中で、作業中その竹林の中から使われなくなった段々畑を発見した。ここにも歴史が!

 大量の竹を切ったけれど、その処理がまた大変! 「とんど焼き」に使えばとの案が出たが、枝が少なく「とんど焼き」で組む櫓(やぐら)には不向きということで断念。「辛うじて『とんど』で飲むカッポ酒用には使えるぞ」とだれかが言い、笑いが起こった。

 神社の年5回の祭事にお供えする鏡餅用のもち米を準備することは、戦後入植者の子である私にとっては地域になじんでいる証のようで、うれしいことである。

 次世代にうまく引き渡せるよう

 こうして、お地蔵さんや神社を守る文化は、農を営む中で喜び・苦労を共有してきた人々によってつくられてきた。

 古くから綿々と続けられてきた農の一担い手として、「うまく次世代に引き渡せますように」と、お地蔵さんと神社の氏神さまに「守り・守られ」、さらに願いをかける思いである。

(新聞「農民」2018.1.22付)
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2018年1月

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