農家が得する
税金コーナー
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農民連の『税金ノート』の効用と
上手な記帳方法について
(上)
農民連の『税金ノート』の効用と上手な記帳方法について、(上)(中)(下)に分けて掲載します。
(1)税金のノート7つの効用
農民連の『税金ノート』は、これまで30年(農民懇時代から)以上にわたって全国の農民連組織が体験し、蓄積してきた税金対策の知恵がいっぱい詰まった財産です。「良くできた内容です」と税務調査時に感想を述べる税務署員も一人二人ではありません。農民連の財産だからこそ、原則として会員にだけ販売(会員外は非売品)しています。
法改正により2014年1月から農業などを営むすべての事業者(所得税の申告義務がない人も含む)は、その記帳と帳簿等の保存が義務づけられました。法律の面からも農民連の税金ノートの必要性が一段と高まってきました。
全国では毎年、春の確定申告時期に、「税金なんでも勉強会」を会員外の農家にも呼びかけます。「ノートだけ分けてほしいが…」といった会員外の農家からの問い合わせが少なからず寄せられますが、この勉強会に参加し、「ノートの効用」を確認するとほとんどの方が農民連に加入してきます。それだけこのノートには魅力があります。
農民連の『税金ノート』は、従来からある農業用ノートに加え、新たに3業種用(農業と一般事業、不動産)のノートも作成されました。これらを使って、しっかり記帳することが、所得税をはじめさまざまな生活関連支出の軽減につながっていきます。
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『税金ノート』の7つの効用は次の通りです。
(1)初心者でもすぐに収支計算ができるようになります。
2、3年もすれば誰でもベテランに。前年に記帳したノートを参考にすれば、より簡単に記帳できます。
(2)年の途中から記帳を始めても、その年度の申告に十分に間に合います。
初めての場合、「領収書の準備ができていない。次の年からやります」という方もいますが、心配は無用です。通帳の引き落としの拾い出しや領収書のないものはメモが有効です。農家は、自分が購入した資材などは案外覚えているものです。ノートの経費項目ごとにページをめくっていくと自然と購入したものを思い出してきます。
(3)経費がもれなく計上できます。
記帳したあとに、各ページを順番に眺め直せば、自然に経費の漏れ、誤りを発見することができます。地域や班で開催する税金ノート記帳会などで農民連の仲間同士が経費項目部分をお互いに出し合って、漏れや誤りをチェックすることもできます。
(4)税金ノートによる収支計算の結果、所得税が大幅に軽減されます。
経費がいっぱいにじみ出た結果、所得が下がり、所得税が大幅に軽減されたり、サラリーマンや年金の兼業農家は所得税が還付されたりします。
(5)住民税や国保税、生活関連支出が軽減されます。
所得税の確定申告をしたあと、6、7月ころに届く住民税や国保税、介護保険料、後期高齢者医療保険料などが、大幅に軽減されていることにびっくりします。そのほか保育料、高校の授業料、医療費(入院、外来)の窓口負担、介護サービス料などさまざまな生活関連支出も軽減されていることが確認できます。
(6)税金ノートは、消費税ほかにも有効です。
所得の収支計算だけでなく消費税の課税事業者の判定、納付する消費税の計算(簡易、本則とも)なども同時にできます。人を雇ったときの源泉徴収税の処理もできます。
(7)税務調査のときも大きな力を発揮します。
記帳しているノートをもとに、事業の実態を税務署にしっかり主張することができます。また、ノートを使用していなかった農家が税務調査を受けるときは、事前に農家の側から売り上げや経費の漏れや誤りについて『税金ノート』を使って訂正して、調査に臨めば先に税務署の側から売り上げの漏れを指摘される場合と比べて、調査対象期間が5〜7年のところ3年に短くなったり、後から計上した経費も認められることで、税務調査が是認(新たな追徴税額なし)されたり、徴税額が最小限に食い止められたりと効果は絶大です。
(新聞「農民」2018.1.15付)
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