「農民」記事データベース20180115-1294-01

伊方原発運転差し止め決定

2018年
原発ゼロへ!

愛媛県農民連
渡部寛志さん(寄稿)

関連/農民連女性部第29回総会

 2018年は原発再稼働ストップ、原発ゼロの声と世論をさらに飛躍させることが求められます。2017年の暮れ(12月13日)に広島高裁は、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じる決定を下し、反原発の運動を大きく激励しました。今回の決定について、愛媛県農民連の渡部寛志さんに寄稿してもらいました。


“過去の遺物”となるまで
私はあきらめない!

 火山噴火などの影響を過小評価

画像  「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」(日本国憲法第76条3項)。広島高裁による運転停止を命じる決定は、退職直前の裁判官が示した最後の良心なのだろう。

 広島高等裁判所は主に次の2点を指摘し、「平成30年9月30日まで、伊方発電所3号機の原子炉を運転してはならない」と決定した。

 (1)阿蘇カルデラ過去最大噴火(噴出体積600立方キロメートル)時の火砕流(設計対応不可能な火山事象)が、伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない。

 (2)設計対応不可能な火山事象が影響を及ぼす可能性の評価についても、四国電力による降下火砕物(火山灰等)の層厚の想定(15センチメートル)は、噴出体積10立方キロメートルの噴火規模を前提としても過小であり、これを前提として算定された大気中濃度の想定(1平方メートルあたり約3・1グラム)も過小であると認められる。

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伊方原発の差止決定を報告する弁護団=12月13日、広島高裁(伊方原発広島裁判応援団提供)

 原発なくなるの強い確信から

 私は福島第一原発の事故を受け、2011年の春に福島県南相馬市から愛媛県松山市に避難した。同年夏には、農業を再開させるため、さらに西の伊予市に移った。伊方原発から40キロメートルの地だ。あのとき「なぜ原発の近くに行くんだ?」と問われることが何度かあった。しかし私は「日本中どこの原発もなくなります。だから原発がどこにあるかは考慮していません」と答えていた。

 「あれ?」。何を間違えたのか。被災からわずか1年余りの12年7月に大飯原発(福井県)が再び運転を始めた。民主党から自民党へと政権が代わり、原発再稼働がより一層推進されることになった。そして15年10月に表明された「愛媛県知事の伊方原発再稼働同意」で決定的になる。

 私は憤りを感じながら、たとえ「仮」であっても「リスク(仮処分で原発の再稼働は停止したが本訴で敗訴した場合、四国電力から高額の損害賠償請求を受ける恐れがある)」があっても、早期に強制力のある判断をしてもらえるならばと、16年5月に愛媛県民11人とともに松山地裁への運転差止仮処分申立に参加した。

 地裁判断待たず運転再開させる

 しかし、地裁判断を待たずして四国電力は、16年8月に伊方原発を運転再開してしまう。そして昨年7月、松山地裁は、差止申立を却下した。私たちは、この決定を受け入れられず翌8月に高松高裁に即時抗告を行った。

 この流れの中で、広島高裁による決定が出ると知ったとき、「地裁で却下されたものが上級審において覆るだろうか? 上級審ほど現政権の意向に左右されるだろうし」と半ば諦めかけていた。

 しかし、その決定により四国電力は、定期点検後の12月に予定していた伊方原発3号機の運転再開ができなくなった。地震動の影響による危険性などが認定されていない問題点はあるが、ともあれうれしい決定だ。

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松山市で行われた差止決定の報告集会=12月13日(伊方原発をとめる会提供)

 原発の危うさを県民は気付いて

 原発は“計り知れない苦しみと悲しみを与え、虚しい世界をつくってしまう可能性を秘めた存在”である。日本国民の大半、愛媛県民の大半もその危うさには気付いているはずだ。

 私は今回の仮処分決定が、原発再稼働の是非を再び“人々の心”に問いかける機会となることを願う。

 高裁決定を「仮」のままにさせぬ

 今回の高裁決定を「仮」のままにさせてはならない。伊方原発の運転差止仮処分申立は、大分、山口の各地裁でも行われている。また、本訴である運転差止訴訟も松山、広島、大分、山口の各地裁で係争中だ。

 原発を「過去の遺物」として葬り去るまで、 私も「あきらめねえこと」にした。


農民連女性部第29回総会
◇2月2日(金)午後2時〜3日(土)午後1時
◇飯坂温泉ホテル聚楽(じゅらく)
       (福島市飯坂町西滝ノ町27)
   福島交通「飯坂温泉駅」送迎バスあり
◇講演 佐川清隆さん(東京大学特任研究員)
   「地球温暖化って本当に解決できるの?
   〜気候変動の現状を学び、再生可能エネ
   ルギーへの転換を!」
◇参加費 1万3000円(宿泊代込み)
◇総会後、被災地へのオプションツアーあり
  3日午後〜4日午後2時に福島駅着予定
  オプション参加費 1万3500円
          (バス代、宿泊費込み)
◇申し込み・問い合わせ 農民連本部女性部
  ※オプション申し込みは1月19日まで

(新聞「農民」2018.1.15付)
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2018年1月

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