「農民」記事データベース20180101-1293-09

“農的なくらしがしたい”
野外で汗をかくのがいい

17年間つとめた教員やめ
農業の道に踏み出した
徳島・板野町 石川五重さん(46)


 母親の観光農園引き継ぐ形で

 阿讃山脈南麓の徳島県板野町に住む石川五重(いつえ)さん(46)は、2015年3月で17年間勤めた教員生活に別れを告げ、国の新規就農者支援給付金制度を活用し、母の美栄子さんの経営していたブルーベリー観光農園を引き継ぐ形で農業を始めました。

 両親が公務員の家庭に生まれ、小さい頃は、一人で農業を営む祖母に連れられて、畑に行ったり、小さな畑をもらって花を育てたりしたそうです。こういった環境から、植物、食べること、環境に関心をもつようになり、自給農家になるのが夢となりました。

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自家製小麦のパンケーキをアピールする石川五重さん

 読んだ本の影響転職を決心した

 大学卒業後は、高校の教員となり、3人の子どもにも恵まれました。いったん教員として走り出したレールから農業へ道を変えるのは難しいと感じていましたが、『パーマカルチャー』(ビル・モリソン著)など読む本の影響もあり、「農的なくらしがしたい」との石川さんの夢は膨らみました。

 そんななかで、農業に転職する人や都会から田舎へ移住する人が増えているとの報道を目にすることもあり、母親が高齢になったこと、周りで耕作放棄地が増えていること等から、石川さんは農業への転職を決心しました。新規就農給付金制度ができるなどの状況変化もあり、家族の同意が得られ、念願の農業へ足を踏み出すことになったのです。

 手づくりジャム加工・販売して

 それから3年が過ぎました。農業経営の内容は夏のブルーベリー観光農園と新しい事業として、露地野菜であるブロッコリーの栽培、そして年間を通じての手づくりジャムの加工・販売を行っています。その他に、農的なくらし志向を反映した米、家庭菜園、タケノコ、梅、栗、大豆、小麦を少量つくり、産直市や自ら事務局を務めるマルシェで販売しています。

 農業をして楽しいことと聞かれると「野外で体を動かすことや汗をかくこと自体がうれしい」そうです。また、「里山の風景の移り変わりや植物の成長がいとおしい」とも。

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農園でマルシェを定期的に開いています

 農家民宿や店も始めたいと思い

 ブロッコリーの栽培は、新規就農給付金制度を利用するためにはじめました。ブルーベリーは無農薬有機栽培ですが、ブロッコリーは地域の人から借りた土地で化学肥料と農薬を使う栽培をしています。環境によい無農薬の作物を供給する農業がしたいという石川さんの気持ちにはぴったりこないブロッコリー栽培ですが、地域の耕作放棄地を再生し、地域の振興には役立っています。

 新規就農給付金制度の給付が切れる2年後からは、体力勝負の現在の農業一本のやり方から自給農業的なノウハウをシェアする、農家民宿やワークショップを始めたいと考えています。お金が地域で循環し、人間関係も環境もよくなる仕組みづくりを模索しています。

 農民連に入って消費者と交流も

 石川さんは1年ほど前に地元で町議をしている人から誘われ、農民連の会員になりました。石川さんは、「農民連で他の作物を作る農家と交流したり、税金などの勉強をしたい。消費者と小麦や大豆の栽培やみそづくりなどの交流をしたい」と話しています。

 石川さんの農園は「落合ブルーベリー園」「いたの里山マルシェ」で情報発信しています。

(徳島県農民連事務局長 天羽生美)

(新聞「農民」2018.1.1付)
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2018年1月

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