「農民」記事データベース20171211-1291-01

価格競争に走る中食・外食業界も

関連/輸入米が大手を振って出回りか

 業務用米不足、米価3年連続値上げ、コンビニのおにぎりが値上げなどと、新聞、テレビなどで話題となっています。この間、米は過剰で安くなるのが当たり前とばかりに価格競争に走ってきた中食や外食の業界。今年の米で何が起きているのでしょうか。


次々と価格の改定へ
量目減らしも限界?

 大手業者が続々中小は苦境に

 大手コンビニのローソンがおにぎり1個当たり6円の値上げで主力商品は116円に。中には内容をグレードアップして1個30円の値上げの例もあります。パックご飯大手の佐藤食品工業は1食当たり2〜10円の値上げ、牛丼の「すき家」も10〜30円の値上げをしました。

 この間、コンビニのおにぎりや外食関係では、米価上昇の際、価格は据え置きで量目を減らして対応してきました。2012年産米の価格上昇時には30万トンの需要を減少させています。

 しかし、今年産の米価の上昇でそれも限界となったものです。それでも大手業者は対応が可能ですが、中小の業者は原料の確保も価格の転嫁も難しく苦境に立たされています。

画像
米、おにぎりの値上げを報道する各紙

 最低の在庫量に不作が重なって

 この背景には何があるのか――。一昨年以来、生産調整が強化され、飼料用米などへの誘導が強力に進められ、主食用米の繰り越し(6月末在庫)が需給均衡の目安とされる200万トンを下回った上に、今年産が天候不順で収穫が遅れたこと、さらに作柄も農水省の発表(10月15日現在、作況100)にも関わらず各地の生産現場からは「10アール当たり半俵〜1俵は少ない」との声が聞かれるなど、明らかに「不作」の様相です。

 このため各地で激しい米集荷の競争が展開され、価格も引き上げられ、農協系統も概算金の再値上げなどを決めています。中でも外食向けなどの低価格米が不足し、価格が15%前後も高騰し、コシヒカリなどの銘柄米と大差がなくなっています。

 農水省の相対価格調査では前年比で全銘柄平均8・3%高、1万4353円(60キロ・税別)です。農家に支払われる農協などの概算金も前年比8%、1000円前後引き上げられ、全国全銘柄平均で1万2936円(農民連調査)程度です。

画像
値上げしたローソンのおにぎり

 それでも米価は生産費に届かず

 しかし、農家にとっては10%前後の減収を考えれば実質の手取りは昨年と変わらず、生産費1万5315円(最近5年間の全国平均)にも遠く及びません。

 家庭用の米も新米切り替えに合わせて米価が改定され、価格は千差万別ですが、相対取引価格から推計して平均的な価格は1キロ400円前後。お茶わん1杯にしてわずか26円程度。これが高いか、安いか大いに議論が必要です。

「米は国産で」の声広げ
米政策の転換へ運動を

 山高ければ谷深し 来年産暴落の恐れ

 米の業界では高騰のあとの暴落を警戒し、「山高ければ谷深し」という言葉があります。

 来年から国が需給調整から完全に手を引き、生産調整への参加メリットの直接交付金7500円(10アール)も廃止されます。生産調整は完全に生産者(団体)任せ、市場任せにされようとしています。

 仮に再び米価が暴落する事態にでもなれば米作りから撤退する農家が続出することになりかねません。

 わずかな作柄の変化で米価が急激に上昇し、価格の転嫁に卸・小売業者が苦しむ――米価暴落で生産者が苦しみ、国民の主食の安定供給を危うくする安倍自公政権の米政策が厳しく問われています。

 米を守る国民運動を農家、消費者、業者と

 農民連は各地で農業関係者や米業界、消費者団体との懇談、申し入れやシンポジウムを開催し、「日本の米を守る運動をご一緒に」と呼びかけています。

 共通して出されるのは「米は国産で」「国の責任で需給と価格の安定を」「生産費を補償する岩盤の対策」を求める声です。この声を大きく広げ米政策の転換をはかりましょう。


輸入米が大手を振って出回りか

 低価格米の不足を補おうと主食用の輸入米が激増しています。年間10万トンの制限のある主食用の輸入米。国産米価格の暴落でここ数年見向きもされませんでした。一昨年は1万3000トン、米価の上がり始めた昨年は3万7000トン、今年度は10万トン丸々輸入されるとみられます。この10万トンは国産米の全体需給にも大きな影響を及ぼし、価格も引き下げる役割を果たすことになります。

 11月29日の輸入米入札では2万2500トンの輸入枠に2倍近い申し込みが殺到。アメリカ産中粒種などが100円前後(1キロ)の関税相当分を払って210円(同)程度で落札しています。

画像
吉野家の牛丼

 牛丼の吉野家がアメリカ産米を、グルメ杵屋がアメリカ、オーストラリア産米の使用を公表しています。今後外食などで輸入米が出回ることになります。

(新聞「農民」2017.12.11付)
ライン

2017年12月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2017, 農民運動全国連合会