分析センターだより
ネオニコチノイド系農薬
世界中のはちみつから検出
科学論文誌『サイエンス』
スイスの研究チームが発表
手間が省けると世界で普及進む
10月6日、スイスのヌーシャテル大学などの研究チームが、世界各地のはちみつにネオニコチノイド系農薬が含まれているという研究結果を科学論文誌『サイエンス』に発表しました。
ネオニコチノイド系農薬は、ミツバチが大量死する蜂群崩壊症候群に関連する物質の一つではないかとして研究が進められている農薬です。旧来からある有機リン系殺虫剤などに比べ、人体への影響が小さく、吸収移行する特徴から、一度散布すれば効果が持続、手間も省けるなどとして評価されており、日本をはじめ世界中で普及が進んでいます。
北米・欧・アジア検出が高い傾向
今回発表された論文によれば、研究チームが世界各地から集めた198のはちみつについて、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、チアメトキサムの5種類のネオニコチノイド系農薬が含まれるか試験したところ、75%のはちみつから少なくとも1種類、45%からは2種類、10%からは4〜5種類の検出が認められたとあります。北米やアジア、ヨーロッパでの検出が高い傾向があることも示されました。
8月には、千葉工業大学の研究チームも、同様の調査を行い、東北から沖縄までの9都県73サンプルからネオニコチノイド系農薬を検出したと報告しています。この調査では、6割以上から0・01ppmを超える検出があったとあります。
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東京都内のホームセンターで販売されていた殺虫剤入りの園芸用肥料。 |
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ネオニコチノイド系農薬のジノテフランが配合されています(下線)。 |
欧米で使用制限求める運動強く
確認されたネオニコチノイド系農薬の検出濃度は、食べることによって人体に影響がでるようなレベルではないと考えられますが、今回の論文や発表によって、植物の受粉を助けるミツバチのような重要な昆虫が、ネオニコチノイド系農薬を散布場所などから持ち帰っている現象が、世界各地で発生していることが確認されたことになります。
近年、欧米では、ネオニコチノイド系農薬の制限を求める運動が進められています。生態系の重要な役割を担う「受粉者」への影響について詳細な調査や研究、またネオニコチノイド系農薬の使用停止、対策代替薬・技術などに取り組む研究や運動が今後も強まっていくと考えられます。
農民連食品分析センターでは、現在、ネオニコチノイド系農薬などの検査に対応しています。積極的な検査などの相談をお待ちしております。
(農民連食品分析センター所長 八田純人)
(新聞「農民」2017.11.20付)
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