「農民」記事データベース20171030-1285-07

鶏卵の残留農薬調査を開始


EUの汚染鶏卵事件を受けて
国内鶏卵を検査し安全性を確認

 7月、オランダ産の鶏卵や鶏肉から、殺虫剤のフィプロニルが検出され、出荷停止になる事件が起きました。幸い、中毒などが発生する濃度ではありませんでしたが、それでも検出された最大値1・2ppmに汚染された鶏卵は、体重10キログラムの子どもが一つ食べれば一日摂取許容量という、安全の目安になる数値を超えるものでした。

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卵の残留農薬を調査

 EU諸国などに影響

 この事件は、EU(欧州連合)諸国に影響を与え、一千万個を超える鶏卵が廃棄になったようです。韓国でも汚染鶏卵が見つかり、フィプロニルの使用実態などが把握されるまで、全養鶏場からの出荷を禁止するという措置が取られました。

 鶏舎には、ダニなどの害虫が発生します。野放しにしておくと、大量発生を招き、採卵率や肥育に影響を与えることがあります。これを防ぐため、薬剤を使用した薫蒸処理などが行われます。フィプロニルは、鶏舎での使用は認められていないものでしたが、駆除業者が「良く効く秘密の薬剤」を売り文句に掲げ、オランダ、ベルギーなどの養鶏場で違法使用したため、大規模な汚染事件へと発展してしまったようです。

 輸入時に検査要求

 この事件、日本への影響はどうだったのでしょう。財務省の貿易統計によれば、ここ1年間、EUから鶏卵を主原材料とした品目の輸入実績は、少量です。厚生労働省の実績調査でも、汚染した鶏卵製品の輸入はなかったとのことです。

 また現在は、EUなど汚染事件のあった国からの鶏卵は、輸入時に全て検査をする対策を取ることになりました。輸入の鶏卵製品については、事件に巻き込まれた国々でも対策が進んだことも加え、ひとまずは安心と言えるでしょう。

 新規装置を使って

 国産鶏卵や鶏肉におけるフィプロニルの使用実態はどのような状況にあるでしょう。日本もEU同様、鶏卵生産の現場でフィプロニル製品は、使用できません。使用実態の検査データもほとんど見つかりません。

 そこで、8月から、農民連食品分析センターでは、市販の鶏卵について、新規導入した検査装置を活用し、フィプロニルを含む378成分の農薬について市場調査を実施しました。検査対象にしたのは分析センター周辺で購入することができた8商品です。その結果、378成分に該当する農薬が検出された商品はありませんでした。

 今回調査できたのはわずか8製品のみですので、流通する鶏卵全てを反映するデータとしては心もとないものです。より多くの製品について検査を実施し、データを集めるための検査支援募金運動を開始しました。

 この調査は、問題のある鶏卵や業者をあぶり出そうというものではありません。日本の鶏卵生産は厳しい経営環境の中でも、苦労を積み重ね生産していることを私たちは知っています。消費者の無用な不安を取り除いて鶏卵離れをなくし、これからも安全で安心な国産鶏卵を届け、食べられる、そんな未来につなげていくための、情報を増やすことを目的としています。

農民連食品分析センター
緊急募金を広くよびかけ

 期限内にぜひ募金を

 身近な卵を検査したい方もぜひ募金に協力してください。募金の募集はクラウドファンディング形式で行います。インターネット上で広く募金を呼び掛ける方法で、期限内に目標額に到達しないと募金が成立しません。応募は募集サイト(https://readyfor.jp/projects/egg01)からお願いします。この形式での募金呼びかけは、分析センターとしてははじめての取り組みです。ぜひ協力してください。期間は12月20日までです。

(新聞「農民」2017.10.30付)
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2017年10月

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