「農民」記事データベース20171023-1284-05

選挙終われば日米FTA?!

韓国に対するトランプ政権の
圧力は他人事ではない


 「白旗をあげた」韓国政府

 “アメリカからの輸入を増やし、アメリカへの輸出を抑えて貿易赤字を解消しろ”――11月のトランプ大統領訪韓を前に、韓国に対する圧力が極限に達しています。この事態は、日本にとって決して他人事ではありません。

 韓国紙の報道によると「トランプ米大統領の『米国優先主義』が韓国経済を襲っている。米国は(10月)に相次いで韓国に対する通商圧力カードを切った。4日にはキム通商交渉本部長(閣僚)をワシントンに呼び米韓FTA(自由貿易協定)再交渉に合意させ、翌日には韓国製洗濯機に対するセーフガード(緊急輸入制限措置)発動を予告した」(中央日報)。キム本部長は「トランプ大統領のFTA廃棄の脅しは、はったりではなく、切迫している」と述べています。

 米韓FTAを「最悪の協定」と非難し、廃棄をちらつかせて圧力を加えているトランプ政権に対し、当初は再交渉を拒否していた韓国・文政権が「白旗をあげた」状態です。

 再交渉の行方は

 10月の米韓協議でアメリカ側は、工業製品・サービス・知的財産権・投資・農産物など、ほぼ全分野にわたる改定要求を提示し、11月のトランプ氏の訪韓時に協議する見通しだといいます。

 日本のTPP反対運動に連帯し、何度も来日して米韓FTAの危険性を告発してきたソン・ギホ弁護士(「民主社会のための弁護士会」通商委員長)は「米国は、単なる協定文の一部改定交渉ではなく、医薬品・知的財産権・農業・サービス市場など全般的改定の圧力をかけ、『貿易赤字解消』『為替条項の導入』など、“トランプ式自由貿易協定モデル”への改編を試みるだろう」と、再交渉の行方を分析。「政策を根本的に見直し、経済民主化を支える通商モデルを築かなければ、韓国はトランプ流の不合理な自由貿易協定に立ち向かえない」と指摘しています(「ハンギョレ新聞」)。

 「貿易赤字の解消」を交渉目標に

画像  トランプ政権は「貿易赤字の解消」を交渉目標に掲げ、韓国、メキシコ・カナダ(北米自由貿易協定)、中国、日本に圧力をかけ続けています。これら5カ国に対する貿易赤字はアメリカの赤字総額の7割超。

 「FTAやWTO(世界貿易機関)など、不当な協定が原因でアメリカが一方的に損害を受けてきた」というのがトランプ大統領の言い分です。しかし、IMF(国際通貨基金)の統計によると、アメリカの経常収支(貿易・サービス・投資)赤字は189カ国中、最悪の189位。原因は、アメリカ多国籍企業の海外進出と国内産業の空洞化、安い外国製品の輸入に依存した浪費経済にあるのであって、貿易協定ではありません。

 「ウソつき」 自民党に対するうらみを晴らすとき

 トランプ政権の閣僚は「農業分野は日本が第一の標的」「2国間交渉では、TPP交渉を上回る合意を目指す」(通商代表)と、日本農業つぶしのねらいを公言し、10月4日には、農務長官が「牛肉や豚肉、乳製品、果物、野菜などの関税を引き下げる日米FTAを熱望している」「訪日するトランプ大統領に農業分野について助言している」と述べています。

 「米政府の元高官は『トランプ氏の言動は予測できない』と強調し、日米首脳会談などで農産物、自動車市場の大幅な開放措置を求める可能性があるとの見方を示した」(時事通信)といわれる通り、「選挙が終われば日米FTA急浮上」の恐れがあります。2012年12月の総選挙で「TPP断固反対。ウソつかない自民党」ポスターを張りめぐらし、わずか4カ月後の13年3月にTPP交渉参加を表明した「ウソつき」政権・自民党に対するうらみを晴らすときです。

(新聞「農民」2017.10.23付)
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2017年10月

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