総選挙の争点は
岡山大学大学院
環境生命科学研究科
小松泰信教授
《寄稿》
衆議院選挙(10月22日投票)は最終盤を迎えました。私たちは今の農政をどうみて、何を選択すべきか。岡山大学大学院の小松泰信教授にメッセージを寄せていただきました。
立憲3党の共闘で
農業の未来を切りひらこう!
あくまでも仮定の話。もし、安倍農政がわが国の農業、農業者、さらには農業団体の将来に明るい展望をもたらすものであったとしても、安倍政権は評価できません。なぜなら、特定秘密保護法や安全保障関連法、そして共謀罪法など国民の多くが反対している法案を数の力で成立させた、あの独裁的政治手法を断じて許すわけにはいかないからです。加えてモリ・カケ問題。そして、憲法に基づく臨時国会召集要求を無視し続け、開いたと思ったら前代未聞の冒頭解散。
農政に関してもしかり。TPPの国会批准を強行し、米の生産調整・交付金の廃止、改革の名を借りた農協弾圧。規制緩和推進論者たちによる農業競争力プログラムを実践するための「農業競争力強化支援法」や「主要農作物種子法を廃止する法律」など、8法案の熟議無き可決成立。
4年10カ月の安倍農政に評価すべきもの無し。日本農業新聞(9月28日)によれば、同紙農政モニターの68・2%が安倍農政を評価していません。
各党の農業に係る公約は…
農業に係る各党の公約の要点は、次のように整理されます(「Yahoo!みんなの政治 政党の公約チェック」のウェブサイトを参照)。
共産党:市場まかせではなく国の責任で農業再建、食料自給率50%台へ。
立憲民主党:戸別所得補償制度の法制化・恒久化。
社民党:農業者戸別所得補償制度の廃止を許さず、法制化と畜産・酪農や果樹・野菜などへの対象拡大をすすめる。
自民党:若者や意欲のある農業者が夢や希望を持てる「農政新時代」を切り拓く。
公明党:生産性向上や生産コストの低減により所得の向上を図る。
希望の党:農業補助金を大胆に廃止して農家への直接払いとし、勝てる農政に転換する。
維新の会:減反廃止を徹底するとともに、コメ輸出を強力に推進。戸別所得補償制度の運用対象を主業農家に限定する。
二極のいずれか結論はあきらか
まず、共産、立憲民主、社民からなる立憲野党の公約は、自給率向上や戸別所得補償制度の維持・拡大など現場の願いを反映しています。
他方、自公は当然として、希望・維新からは自公による現農政をさらに強化する可能性がうかがえます。
農政における争点は、この二極のいずれを選択するかですが、結論は明らかです。
共闘を進める立憲野党を選択し、安倍農政やそれを加速させる常軌を逸した動きにブレーキを掛ける。そして、担い手の多様性を認め、消費者や実需者との重層的な関係性を尊重し、食料主権に立脚した農業の構築を目指す。
農業の未来を切り拓(ひら)く扉は、そこにあるのです。
(新聞「農民」2017.10.23付)
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