第26回伝統食列車
晩夏の北海道へ全国から63人
日欧EPAは
北海道農業を直撃
第26号伝統食列車が「晩夏の北海道道東へ、風土と生態系にそったマイペースな暮らし、農漁業のありようから日本の食の未来を拓く」をテーマに全国から63人が参加して行われました。
本別町の研修会では、料理研究家の林敏子さんが、「十勝の伝統食、特に豆」について「あるものを最善に生かして食べること」と話されました。
続いて北海道農民連委員長の山川秀正さんが「日欧EPA(経済連携協定)は北海道農業を直撃」と題して講演。日本の食料基地といわれている北海道農業は原料供給型で、道内の食料自給率は200%。日欧EPAの「大枠合意」の特徴について、「ヨーロッパから安い加工食品(チーズ・乳製品・スパゲティー・ベーコン・トマト加工品・ジュース類・ワイン・食用油)の輸入を認めることです。これでは北海道の農産物の行き場が狭まり、地場の食品加工業も脅かされます」と訴えました。
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本別町で。豆腐、煮しめ、あきあじ鍋、五目ご飯、サンマの煮付けを味わう |
日本の食の未来ひらく
地域に合ったマイペースなくらし
食材を最善に生かして作る料理
マイペース酪農から何を学ぶか
根釧原野は戦後アメリカの余剰穀物の輸出市場として、規模拡大と配合飼料で生乳生産を増やす酪農が進められました。これに対して「1ヘクタールに牛1頭」の法則にそって、土・草・牛を循環させ、そして牛の生理に合わせて健康に牛を飼い、おいしい牛乳を生産し、人間の生活も健全にというのがマイペース酪農です。
中標津町ではその実践家・三友盛行さん(酪農適塾塾長・農場継承を支援する会会長)に牧場を案内していただき、土の中の微生物の役割、草や糞(ふん)の話を楽しく聞きました。マイペース酪農は、三友さんを中心に学び合いの交流会が始まって26年になります。
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「牛糞と尿」で堆肥をつくる過程を説明する三友さん(中標津町) |
農業ほど自由で
楽しいものはない
特色生かした郷土食交流会
豆の町・本別では、「本別義経太鼓」の演奏で始まり、「豆腐(黄大豆・青大豆・黒豆)」や「五目ご飯(青大豆入り)」、ようかん(小豆・手亡)など多彩な豆料理が登場しました。
生乳生産量日本一の別海町では、別海のサフォーク種のラム(子羊)のジンギスカンやマイペースの農家さんが搾った牛乳や加工品、手作りベーコン、自家製酵母パンなどが提供されました。
日本有数の漁港・釧路では、さんまご飯、イクラ入りちらしずし、家庭で眠っていた「三平皿」を掘り出し、鮭の三平汁、釧路アイヌ協会のアイヌ料理や伝統楽器・トンコリの演奏もありました。
地域の特色ある食材を使った料理と、山菜・昆布・じゃがいも・鮭は、それぞれの地域の食べ方で出されました。
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別海町クローバーハウスでジンギスカン、鮭のチャンチャン焼きを囲んで交流 |
平和と食は一対 この思いを強く
「矢臼別演習場」で聞いた砲弾音に恐怖が走り、「平和と食は一対」の思いを強くしました。
当会が大切にしてきた「国産の旬の食材を自らの手で調理・加工すること」の意味や、自分の頭で考え、仲間と交流・学びながら実践することの大切さを再確認しました。三友さんの「農業ほど自由で楽しいものはない」という言葉が心に響きました。
(日本の伝統食を考える会役員 浅岡元子)
(新聞「農民」2017.9.25付)
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