債権機構動かす画期的な成果
“徴収の猶予”勝ちとる
茨城県西農民センターと会員
25年間も苦しんできた
滞納金が農民連で解決
茨城県西農民センター会員のAさんは6月2日、茨城租税債権管理機構(以下、機構)に「徴収の猶予」を申請し、8月22日に「猶予決定」を勝ち取りました。
機構は、県内市町村の税金滞納債権を請け負って、強権的にとりたてる組織で、機構に猶予を認めさせるのはとても困難と言われるなかでの、画期的な成果でした。
ワラをもつかむ気持ちで相談
Aさんは農業の傍ら、不動産業、建築業など4つの会社を経営していますが、平成のバブルがはじけてから経営が行きづまり、1993年(平成5年)からの滞納が国税と地方税合わせて8500万円を超えるほどになりました。これまで何度も市役所や税務署に相談に行きましたが、滞納した税金の支払いを求められ、月20万円もの払いきれない金額を約束させられました。
こうしたなか、今年2月にAさんは、「税金が払いきれない」「差し押さえを受けている」とワラをもつかむ気持ちで、農民センターに相談。確定申告期間中だったため、日を改めて4月に相談を受けることにしました。
4月に相談を受けた農民センターでは、Aさんと相談して、滞納がどれほどあるのかから調べ直しました。B市はすでに機構に債権を移行。C市は債権を機構に送る準備中で、国税局では差し押さえた財産を公売にかける準備中であったという実態がわかりました。
まず最初に機構に債権を送る準備中だったC市に、Aさんと農民センター役員が訪問し、Aさんの実態を説明し、機構に債権を送らないよう求めましたが、C市の返事は芳しくありませんでした。しかし機構に債権が送られては解決が長引くと判断し、5月26日に「徴収の猶予」を申請しました。
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茨城県西農民センターも参加した3・13重税反対統一行動(2015年) |
支払い困難な理由をまとめて
申請にあたっては、4つの会社の決算書と申告書を分析し、滞納に至った経過、現在の財務状況や支払い困難な理由をまとめ、請願書を添付して、窓口でていねいに説明を行い、申請後も何度も窓口を訪問し、訴え続けました。
また、5月24日には国税局を訪問して、差し押さえ財産を公売にかけないよう請願。その後、1カ月たっても返事がないので、7月7日に「納税の猶予」を申請しました。
他の5つの自治体と機構にも6月中に「徴収猶予」の申請をし、何度も窓口を訪問しました。
一度も「徴収の猶予」を受け付けたことのない自治体の窓口では、「そんなことは認められない」の一点張りで納得してもらえず「警察呼ぶぞ」の一幕も。他の自治体からは担保物件の提供を求めてきましたが、ほとんどの財産は差し押さえられているため、提供できる担保物件はないと断りもしました。
こうした経過の後、7〜8月にかけて、機構と6つの自治体から「徴収猶予」の許可(承認)通知書がAさんに届きました。
機構からの通知書では、1993年(平成5年)からの滞納分2234万円余を、2018年まで猶予するとなっていました。
他の6つの自治体の660万円余の滞納も猶予されているので、合計2895万円余が、来年5月まで猶予されます。
機構は、認定の理由を「納税者に著しい損失の実態が生じたとはいえないものの、それに近い税引き前当該純損失の状態が生じる原因となった売り上げの著しい減少、または経費の著しい増加が生じていると認められるため」としています。
そして一時に納付することができない事情の詳細については「関連法人を含めると、経営状態の悪化等により全体で資金を融通しあっており、実質的に納付能力が認められないため」と結論づけています。
各通知書では、新しい滞納をつくらないことを条件に、1つの市が月1万円、機構と他の自治体は月に2000円を、来年5月まで払うことになりました。「猶予」を受けたことにより、滞納税が9%から1・7%になります。払いきれない場合、もう1年延長することができます。またどうしても払えない場合、厳しい条件がありますが「執行停止」という処分があります。執行停止になった場合、債権は残りますが、3年間業績が回復せず支払いが困難なときは、滞納している税金は全額免除になります。
猶予が認められ
考えも前向きに
滞納税が9%から1・7%に
Aさんは当初「20年間、市役所や税務署に払えないから何とかしてくれと頼んできたが、何も教えてくれなかった」と「徴収の猶予」に半信半疑でしたが、実現すると「個人で対応していたときは市役所や税務署は高圧的だったが、農民センターと一緒に出向くと対応がていねいになった」「猶予が認められ、前向きに考えられるようになった」と話しています。
徴収(納税)の猶予とは
国税については「納税の猶予」、地方税については、「徴収の猶予」といいます。「徴収の猶予」を受けることで、(1)新たな滞納処分を受けなくなる、(2)差し押さえが解除される、(3)猶予期間に対応する延滞税の全額または一部が免除になるなどの効果があります。猶予の申請中と猶予期間中は、納税義務についての時効は進行しません。
(新聞「農民」2017.9.25付)
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