農家が得する
税金コーナー
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農業申告の経費について
経費の見方で税額が相当違う
農業所得は収入と経費で決まります。なかでも経費の見方で税額がずいぶん違います。農民連の『税金の手引き』では、「1円ももらさずに記帳しましょう」とし、領収書や伝票、レシートの保存を呼びかけています。また、家事関連費との按(あん)分について具体的に示しています。
所得税法37条で「必要経費に算入すべき金額は…これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用…の額とする」としています。つまり「その所得を得るために直接要した費用」が経費です。
還付申告者を呼び出して…
岡山市の組合員Sさんが「お酒代5千円」を雑費で経費算入していました。タクシー運転手で兼業農家ですから、還付申告をしていました。その当時税務署は、還付申告者を農協や公民館に呼び出して確認をするということをしばしば行っていました。
Sさんが経費計上した酒代は「一般生活のし好品」だからダメと呼び出しが。しかし、Sさんは自分がレンコン生産農家であること、レンコンは正月前の出荷が価格的に一番良いので、11月から12月にかけて、ときには氷を割りながら腰まで泥水につかり高水圧ホースで掘ることを説明。「あんたもそのころ来て掘って見せてくれ。酒を少し飲んで体を温めないと掘れない仕事だよ」との訴えに「ハイ次に行きましょう」と否定せずに進みました。その経費がいかに所得を上げるためにかかっているかの説明の大切さを学びました。
署員に教わった経費算入も…
また、税務署員が教えてくれた経費算入もありました。それは農家が購入する大型農業機械(コンバインやトラクターなど)を新規購入すると、これまで使用していた古い機械を「下取り」してくれます。
例えば200万円のトラクターを購入し、古いトラクターを40万円で下取りしてくれたとします。減価償却資産の控除額は、定価の200万円で8年間償却できます。
「下取り価格」の処理には注意を
問題は、下取りの40万円の処理です。下取り価格が未償却残高より少ない場合は「償却損」として経費算入しますし、大きい場合はその差額は事業(農業)用資産の売却ですから、譲渡所得として計算します。50万円の控除があり、ほとんど申告の必要はなくなりますが、「値引き」はダメです。契約書または領収書に「下取り価格」と明示してもらいましょう。
ただし、消費税の課税事業者になっている場合は、課税売上高に加算されますので、注意が必要です。
(岡山県農民連 坪井貞夫)
(新聞「農民」2017.9.18付)
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