農家の税金対策
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能力に応じて支払う納税対策
農民連の税金対策の3つの柱の2つ目「納税者の権利を守る運動」は、(1)能力に応じて支払う納税対策と、(2)税務調査対策に大別されます。今回は納税対策について説明します。
憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を定めています。本来、この最低限度以下の所得に課税することは憲法違反ですが、現実には、各種の税金が生存権を侵害するところにまで課税されています。
こうした憲法違反の課税を、納税段階で調整する仕組みとして、「納税の猶予」(地方税の場合は「徴収の猶予」)「換価の猶予」「滞納処分の執行停止」などの「納税緩和制度」があります。
税務署などが税金の滞納者に対して、すすんで「納税緩和制度」を説明することは少なく、説明されたとしても、多くの条件があることなどから、申請をあきらめて泣き寝入りする人が多いのが現状です。その制度をよく学び、最大限に生かすことがとても重要です。
たとえば、国税通則法46条2項に定める「納税の猶予」は、次の5つの事由のいずれかにあてはまるときに、猶予を受けることができます。
生存権を否定する課税は違憲
納税の猶予
(1)納税者の財産が災害や盗難などの被害を受けたこと
(2)納税者または納税者と生計を一にする親族が病気・負傷したこと
(3)納税者が事業を廃止または休止したこと
(4)事業について著しい損失を受けたこと
(5)上記4項目のいずれかに類する事実があったこと
税金の納付が困難なときは、(1)〜(4)にあてはまらなくても、(5)を最大限に活用し、事情を丁寧に記入して説明し、申請しましょう。
納税の猶予が認められた場合、延滞税が減額または免除されます。差し押さえられた財産があるときは、申請により差し押さえを解除することができます。猶予期間は1年以内ですが、やむをえず1年以内に支払うことができなかった場合には、さらに1年間猶予期間の延長を受けることができます。
国税を滞納している納税者が納税により生活を著しく窮迫させるおそれがあるときなど一定の場合には、国税徴収法153条の規定により、滞納処分の執行を停止することができます。
(税金対策部)
(新聞「農民」2017.9.11付)
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