第63回日本母親大会 in 岩手
女性が変われば、社会は必ず変えられる声をあげよう、地域を守ろう第63回日本母親大会が、8月19、20の両日、岩手県盛岡市で開催され、のべ1万700人が参加しました。
農民連の運動でもの言う女性に岩手県での開催は29年ぶり、2回目。牛肉・オレンジの自由化反対の運動の高まりのなか、1988年に岩手県で開かれた第34回日本母親大会は、農村・漁村女性の参加が過去最高となりました。「食と農」がテーマの分科会や、同時開催された第3回「農村のお母さん交流会」にも多くの農村女性が集い、翌年の農民連女性部結成への結節点となりました。くしくも前回と今回の岩手大会の両方で、「食と農」分科会の司会を務めた茨城県農民連の川澄敬子さんは、「前回も今回も『食と農』の分科会には多くの農村女性が参加しましたが、雰囲気は全然違いました。前回、発言が多かったのは消費者や労働組合などの女性たちでした。でも今回は多くの農村女性が発言していて、この間の農民連や女性部の運動が農村女性の“もの言う”力、姿勢へと結実しているのを実感しました」と、話しました。
女性も農政に声をあげよう1日目は、25の分科会のほか岩手、宮城、福島の被災地を訪問する移動分科会が6コース設けられ、話題を呼びました。「農業・漁業・地域を共同の力でよみがえらせよう」の分科会では、JA岩手女性組織協議会会長で、現地実行委員長の煖エ弘美さん、全漁連(全国漁業協同組合連合会)の女性部連絡協議会会長の盛合敏子さん、いわて生協副理事長の内澤祥子さんの3人を助言者に招き、熱心な討論が行われました。 煖エさんは、農家の夫と結婚して農業をやるうちに、自分たちの工夫だけでは安定的な経営は守れないという現実に直面し、農政や社会のあり方にも疑問をもつようになったことを語り、「“女のくせに生意気だ”と言われてもあきらめないで、女性でも農政に声を上げることが大切」と強調。「農協や農業委員会などの組織があることが、農業と地域の共同を守るうえで大きな力になっている」と話しました。 盛合さんは、復興や漁業者の暮らしに触れながら、漁業でも女性が大きな役割を果たしていることを紹介。同時に漁業ならではの男性社会の壁の高さをつぶさに語り、「女性の力を集めて、漁業と地域を守っていきたい」と力強く話しました。 内澤さんは、いわて生協の復興支援や食の安全を守る取り組みを紹介。「組合員みんなの力、協同の力を集めて、暮らしや地域を守る取り組みができるのも協同組合だからこそ」と話しました。
後継者を育てて家族農業守ろう討論では、「農業の後継者問題がすごく深刻。中間管理機構に農地を出しても、作り手がいないのが現実」(岩手)、「娘が青年就農給付金を受給しながら農業を継いでいるが、支援金だけでは子育てできない」(徳島)など、後継者不足と就農支援のあり方が大きな話題に。福島県農民連の佐藤常子さんは、「後継者の育成には、自治体ぐるみの息の長い支援が必要。女性が自ら声を出して、女性の力で地域を守っていこう」と呼びかけ大きな拍手がわきました。最後に、この分科会のまとめとして、「食料自給率を上げていきましょう」「家族農業・林業・漁業を守るための継続的な支援制度を充実させましょう」などの4項目の「申し合わせ事項」を採択し、閉会しました。
全体会には農民連女性部も登壇2日目は全体会が開かれ、母親大会史上初めて開催地の県知事の達増(たっそ)拓也氏と、谷藤裕明盛岡市長が来賓としてあいさつし、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。主催者あいさつした長尾ゆりさん(全労連副議長)は、母親運動がビキニ環礁での水爆実験を受け、核兵器の危険性から子どもを守ろうと呼びかけて始まったことに触れ、先月、国連で核兵器禁止条約が採択されたことを歓迎。欠席した日本政府を批判しました。 フォトジャーナリストの安田菜津紀さんが、「写真で伝える世界、東北の“今”」と題し、記念講演しました。カンボジア、岩手県陸前高田市、シリアなどの現状を写真で紹介。そのなかには、岩手県漁民組合の漁師、菅野修一さんとお孫さんの写真も。「自然災害も紛争も、ある日突然、当たり前に続いていた営みを奪っていく。そして、生き抜く人々を最も追い詰めるのが忘却なのです。だからこそ、私たちの役割をともに考えていきましょう」と語りかけました。 今日の交流のコーナーでは、農民連女性部も横断幕を持って登場し、「政府は、影響試算もせずに日欧EPA大枠合意を発表しました。食料自給率を向上させろ、農業と食料を農山村を守れ! お互いにリスペクトの立場で運動を広げ、はね返しましょう!」と、元気にアピールしました。
農村のお母さん交流会に100人母親大会の1日目の夜、岩手県盛岡市のつなぎ温泉で、「農村のお母さん交流会」が開催され、北は青森、南は九州・熊本から約100人が集いました。福島県から21人の女性たちがマイクロバスで参加したほか、地元岩手県から20人が参加。東日本大震災後、岩手県農民連女性部が継続的に支援活動に取り組んだことがきっかけでつながりができ、岩手県農民連に団体加盟することになった岩手県漁民組合からも4人がかけつけました。 各県の参加者が一言アピール。テーブルにはシソ巻き、あぶらやき、枝豆、ギバサ(アカモクという海藻)の酢の物などの郷土食や、ブドウなどが並び、参加者も大満足。最後に岩手県出身の歌手、新沼謙治さんの「ふるさとは今もかわらず」を合唱しました。
(新聞「農民」2017.9.4付)
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[2017年9月]
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