「農民」記事データベース20170828-1276-07

農家が得する
税金コーナー
(9)


皆の知恵と共同の力で節税対策

 農民だから農民連に入りたい

 岡山県北地域はかつて、岡山北部酪農組合(略称北酪)で、多くの酪農家ががんばっている地域でした。古くから栄えていた酪農家は民主商工会で税金の申告をしていましたが、今から30数年前に、十数人の酪農家が「農民だから農民連に入りたい」と申し出があり、農民連の事務局を呼んで税金の説明会が行われました。

 集乳所に集まった酪農家からの「農民連のメリット(利点)は何か?」との問いに、自分で記帳簿を付けて節税することの大切さと、家事関連費・専従者控除の付け替えなど経費の取り方などを挙げながら、農家の立場に立った税務申告について大声で議論しました。

 はじめは「自分で記帳なんてしたことがない」と大変弱腰で決意ができませんでした。しかし、「農業経費とは何か、給与所得者の源泉徴収との違い」などを話し合ううちに、一人の会員が発言しました。

 「自分の経営は自分が一番知っている、経費を決めるのは自分。自分のためだから記帳に努力をしよう。みんなに役立つ農民組合を作ろうじゃないか」と発言し、続けて「牧草栽培には糞尿(ふんにょう)を生でやるよりも、堆肥に発酵させて施した方が良い。農民組合で、堆肥組合を設立してよい堆肥を作りよい牧草を育てるのと、組合から堆肥を買って経費を作り、節税を実現しよう」と提案しました。

 堆肥組合で良質堆肥と経費を生み出す

 さっそく事務局を作り、提案者を中心に農民組合と酪農堆肥組合ができました。そしてその年から堆肥作りが始まりました。14、15人の各家の堆肥舎に順番でみんなの堆肥を積み込み、途中に何回かの切り返しも共同で行う仕組みを作りました。

 共同作業に参加すれば当然日当が支給されますが、給与所得なので農業収入には含まれません。でき上がった堆肥は「堆肥組合」から買い取り、自分の畑で使い経費となります。しかも堆肥組合に参加した給料で、社会保険に加入し厚生年金保険料を収める仕組みを作りました。

 年齢もありますが経営的にも難しくなったのが原因で、全員が酪農をやめましたが、今でも農民連に残り、米と黒豆などの栽培でがんばっています。堆肥組合のおかげで今受けている年金は、基礎年金とわずかですが厚生年金をもらっており、集まるたびに当時のことで話は尽きません。

 皆の知恵と共同の努力が豊かな現在につながっています。

(岡山県農民連 坪井貞夫)

 今回から連載に番号をつけます。「農家が得する税金コーナー」は今回で9回目になります。

(新聞「農民」2017.8.28付)
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2017年8月

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