農村の魅力発信で
人を呼び込む
農民連青年部
夏の学習交流会
in 台湾
地元農家と親しく交流
台風被害者の手伝いも
観光振興か地域環境で苦悩
国際農民組織ビア・カンペシーナにオブザーバ―参加している台湾農村陣線(TRF)のつながりで実現した今回の台湾訪問。訪れたのは台湾北東部にある宜蘭(イーラン)県です。宜蘭県は湧き水が豊富にあり、稲作が盛んなほか、ウイスキー製造も行っています。南部に比べると涼しく、南部のような二期作、三期作ではなく、1回の作付けで、訪問したのは稲刈りが終わった後でした。
台北との間には山脈が横たわっていますが、高速道路のトンネルが開通したことにより、台北からの移動時間が大幅に短縮されました。台北から多くの観光客や移住者が訪れていますが、一方で、農地の所有権が都市住民に移り不在地主化や、住宅などの開発も進み、地域の住民は観光振興と地域環境の維持の間で苦悩しています。
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地元農家のみなさんとパチリ |
就農希望者が生まれてきて
米農家の頼(らい)青松(ちんそん)さんは日本の生活クラブ生協で1年間研修を受け、日本の生協のシステムに感銘を受けました。帰国後、台湾の主婦連盟で働いた後に、就農を決意し、奥さんの実家である宜蘭県へとやってきました。
「生協の仕組みをそっくりそのまま継承し、米の直販事業を始めました。予約販売で営農資金を確保し、農地を借りて耕作を始めました。今で言うクラウドファンディングのような感じですね」と頼さん。有機栽培で米作りを行い、お客さんたちが作業を手伝いに来る中で、新たな就農希望者が生まれていきました。
「半農半]の生活をしながら米作りをしている人たちは実に楽しそうに、笑顔を見せながら作業しています」と話します。楽しんでいる姿を見て、現地の人たちが農村の魅力に気付き、新しい人たちが頼さんの周りに集まってきます。農地や住む家は奥さんと二人で世話をしています。この中でLGBT(性的少数者)の女性が集まった農業法人などもでき上がりました。
頼さんは「農家の暮らしを世界中に発信することが大切」だといいます。「楽しそうな様子を見て、人は集まってくる」からです。
小学生への食農教育なども行い、地域活性化に奮闘する頼さんの話に、参加者は聞き入っていました。
食文化にも大いに触れた
農の魅力を伝える工夫
実は、前日まで宜蘭県は台風の真っただ中にあり、農家にもかなりの被害が出ました。青年部としては、少しでも力になりたいと思い、被害にあった果樹、養蜂農家のお手伝いに向かいました。
文旦畑では多くの実が風で落ち、あるいは傷がついていました。無事な文旦を守るために、袋掛けを手伝うことになりました。
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子どもがよくやるイタズラをまね、文旦の皮を頭に |
台湾の文旦は緑色で日本の物と形状も違い、三角形に近いものでした。皮に傷がついているものや、育ちすぎたものを避け、果実に袋をかぶせていきます。2時間ほどの作業でしたが全身から汗がふき出ます。作業後はおいしいはちみつ水をいただき、お土産に、はちみつまでもらいました。
農業視察だけではなく食文化にも大いに触れる機会がありました。ハスの実をむき、豆腐のこうじ漬けや団子を作るなど、体験を通して台湾の食文化に触れました。また、宜蘭の夜市では、たくさんのお店が並び、思い思いの料理を注文。楽しい夜を過ごしました。これらの体験も、頼さんの言う「農や地域の魅力」を伝えることの工夫だと感じました。
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豆腐のこうじ漬けづくりにチャレンジ |
つながり大切に今後も交流を
参加した福島・会津農民連の佐藤哲子さんは「こちらの取り組みに足りないものは、情報発信と気軽さだと考えさせられた。農業体験だけではなく、『気軽に』『いつでも』『何か体験する』ことが農村に人を呼び込むことにつながるのだろうと思えました。台湾に行くことができて本当に良かったです」と感想を寄せました。
今回、台湾のみなさんは本当に温かく迎えてくれました。新しくできたつながりを大事に、青年部は今後も交流を続けていきます。
(新聞「農民」2017.8.14付)
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