「農民」記事データベース20170807-1274-01

舞鶴市からリポート

農業委員の選任
公選制から市町村長の
任命制に変わって

京都・舞鶴市農業委員
前会長 石束輝己(いしづかてるみ)さん(82)
=舞鶴農民連代表

 農民の意見を農政に届けるなど、「農民の代表機関」の役割を果たす農業委員会。農業委員の選任が公選制から市町村長の任命制に変わったもとで、いま農業委員会はどうなっているのか。京都府舞鶴市からリポートします。


透明性のない選任

会長ら現職4人はずす

 農業委員会が公選制から市町村長の任命制になったなかで、京都府舞鶴市議会は、6月議会で19人の新しい農業委員を、市長からの推薦に基づいて選任しました。

 しかし、市長の選考過程をめぐって関係者から大きな疑問と怒りの声があがっています。

 委員への応募者は、定数を5人上回りましたが、前会長の私を含む現職の農業委員4人が選考からはずされました。

 選考基準(表)は、公募段階や選任前に発表されず、選考後に渋々発表し、すべて密室協議で決定されました。

 公募締め切り後 選考基準づくり

 農林水産省は、選考にあたって、「任命過程の公正性及び透明性を確保する」ことを求めており、「応募者や前農業委員の意見を聴く、パブリックコメントの実施等」ということを例示していますが、舞鶴市はこれを無視し、選考委員会も設けず一方的な選考基準をつくり選考しました。

 また、応募段階で選考基準を示さず、公募締め切り後「選考基準」がつくられる等、意図的な委員外しが行われました。

 このため、選考過程の透明性がなく、不公正な選考が行われ、関係者からも異議が続出しました。

実績評価なし
6期経験者も外す

 舞鶴市の選考基準は、年齢区分を設け、49歳以下を30点とし、以下年齢があがるとともに点数を下げ75歳以上は0点として、事実上の定年制をとり、また、農業委員としての実績は全く評価していません。

 従って、若い農業後継者を育てるため、長年がんばってきた委員、数年来「有害鳥獣対策」強化のため猟友会などと連携した体制づくりに貢献してきた委員、6期の間、地域振興の推進に尽くしてきた委員などが選考から外されました。

農民の声が届かない
国に追随の農業委員会に

 また、推薦について、個人推薦を1点とし、集落営農の育成に大きな役割を果たす農業法人の推薦や役員を低い点数で評価するなど舞鶴市の農業振興を考えないやり方も問題があります。

画像
相談にのる石束さん(こちら向き右側)

 今回の舞鶴市の「新農業委員選任」の経過は、政府の農業つぶしの政策とたたかえない農業委員会づくりに、舞鶴市が屈したものといわざるをえません。


農業委員会

 農業委員会とは、農地の売買や貸借の許可、農地転用への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地についての事務を行う行政委員会として市町村に設置されています。任期は3年。

 2015年の農協「改革」関連法の一環として、農業委員会法が「改正」され、昨年4月に施行されました。これまでの公選制を廃止して市町村長による任命制が導入され、首長による恣意的な選任につながる懸念があります。

 また、法律の目的から「農民の地位向上」が外され、「業務」の項目から「意見の公表、建議」を削除しました。

 農業委員会の農民の代表機関としての権限を奪い、農地の最適化、流動化のみを行う行政の下請け機関に変質する恐れがあります。

(新聞「農民」2017.8.7付)
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2017年8月

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