日欧EPA「大枠合意」は、
ごまかしの「政治合意」にすぎない
発効阻止、安倍政権打倒に全力を上げる
2017年7月7日
農民運動全国連合会事務局長・吉川利明
一、安倍首相は7月6日、ベルギー・ブリュッセルで欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長と共同記者会見を行い、経済連携協定(EPA)交渉の「大枠合意」を表明した。
農民連は、多くの国民や農民の反対の声を無視し、また、交渉経過や影響試算を一切明らかにしないまま「大枠合意」に突き進んだ安倍政権に断固、抗議する。
一、政府が発表した「合意」内容によれば、交渉分野は27に及び、国民生活全般に影響をもたらすことが懸念される。特に農産品では、TPPでは手付かずだったソフトチーズに初年度2万トン、16年後に3・1万トンの低関税輸入枠を設定し、関税をゼロにすることや、世界的に競争力のあるワイン、パスタ、木材などの関税を撤廃するなど、TPPを上回る水準となっている。EUが加盟各国に示した試算では、日欧EPAによって「日本への食肉や乳製品など加工食品の輸出が最大1・3兆円増加する」などとされているように、日本の農林業、とりわけや酪農への打撃は計り知れない。
農民連との交渉で農水省高官が、「日欧EPAの合意はTPPなど他の経済連携協定にも波及する」ことを認めているように、今回の「大枠合意」が今後の11カ国TPPや日米2国間交渉、既に発効している日豪EPAにも波及することは必至である。安倍首相は「今回の交渉の結果は、皆さんにも理解してもらえる結果になった」と農業団体代表に述べたが、とんでもない。
一、今回の「大枠合意」は、対立している重要項目を棚上げした「政治合意」にすぎず、発効を見通せる状況にはない。
交渉で最も鋭い対立点になり、今回、棚上げされたISD(投資家対国家紛争解決)条項について、安倍政権は導入を要求しているが、EUは強く拒否している。仮に全項目にわたって合意しても、EU加盟28カ国の全ての国が批准・承認しなければならず、「数年単位で時間がかかる」ことが指摘されている。
一、東京都議選で自民党は、57議席から23議席へと歴史的大惨敗を喫した。首相自身にかかわる森友・加計学園疑惑などの政治の私物化、共謀罪での国会のルールを無視した憲法破壊の横暴、憲法9条の明文改憲という安倍暴走政治への都民の怒りの審判が下された。今回の「大枠合意」は、ボロボロ状態の安倍政権が「成果」を焦った「政治的な合意」にすぎず、たたかいはこれからである。
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日欧EPAの大枠合意に抗議する「TPP参加反対京都ネットワーク」。マイクを握るのは京都農民連の上原実副会長(左)=7月7日、京都市 |
農民連は、日欧EPAのねらいを徹底的に明らかにし、国会批准を阻止するために全力でたたかうとともに、TPP11・日米FTA(自由貿易協定)阻止の運動に総力をあげる。また、市民と野党の共闘を発展させて次期総選挙で安倍政権を退場させるために全力をあげるものである。
(新聞「農民」2017.7.17付)
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