種子法廃止
種子農家
「今後が心配だ…」
藤本 哲さん(岡山市)
種作りならではの厳しい栽培基準
これまで日本の米、麦、大豆の種子を守ってきた主要農作物種子法が、先の国会で廃止されました。岡山県農民連は、種子栽培農家を訪問し、実情を聞きました。
岡山県では水稲の種子は、岡山市、瀬戸内市邑久(おく)町、高梁市有漢(うかん)町、苫田郡鏡野(かがみの)町で、9品種が栽培されています。
岡山市南区藤田の農民連会員の藤本哲さん(69)は、父親の代から15ヘクタールでヒノヒカリの種子を栽培しています。藤田地域では40人の農家が岡山農協藤田支所の種子部会に所属し、ヒノヒカリ、アケボノ、朝日、ヤシロモチの種子を栽培しているそうです。
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藤本さん(右)と県農民連参与の坪井貞夫さん |
「オヤジの代から種を作っとったから…」と自然体の藤本さんですが、種子部会の申し合わせ事項を見せてもらったところ、やはりその栽培基準はたいへん厳しいものがあります。
種子の稲も栽培方法そのものは食用の稲作りと基本的に変わりないのですが、「1農家1品種」「混種などには十分注意する」といった基本事項のほかに、取り決め事項は10項目に及びます。「隣接ほ場とは、不作付け地を5メートル以上確保する」、「農機具は水稲のみ、かつ原種使用に限る」、「自らが全ての作業に携わる」、「ほ場審査に立ち会い、指示事項には必ず従う」など。さらには、取り決め事項を守らない生産者にはペナルティーを課す旨まで明記されています。
立ち合い審査には、この地域の農業普及指導センター、穀物改良協会、JA、そして生産者が参加して、8月から11月まで毎月行われ、病害虫、変種、異品種、雑草の発生状況、発芽率などが調べられます。
今回の種子法廃止に、「今後、どうなるのかとても心配です」と言う藤本さん。今回の種子法廃止はあまりに性急で、生産農家にも十分に知らされていないのが実態です。
種子生産への県の支援を弱めないで
岡山県農民連ではこの間、農水省の地域説明会に参加したり、県の農業試験場に視察・懇談に行ったりして、この問題に取り組んできていますが、聞けば聞くほど、廃止に疑問がわいてきます。農水省は、廃止後の具体的なガイドラインを夏以降に発表するとしています。農家や消費者にもっとこの問題を知らせ、種子法が廃止されても県が種子生産への支援を弱めないよう、さらに運動を強めていこうと話し合っています。
(岡山県農民連 秦明美)
(新聞「農民」2017.7.10付)
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