この人
無肥料自然栽培にこだわる
佐々木忠幸さん(64)
(埼玉農民連会員・東京都清瀬)
固定種の野菜知ってほしい
写真を見て、誰かに似ていると思いませんか? そうです。農民連元会長の佐々木健三さん(福島、酪農)ですね。実は、写真に写っている佐々木忠幸さんは、健三さんの弟さんなのです。
忠幸さんはいま、埼玉県東松山市とときがわ町で、一代限りのF1種でなく、何世代にもわたり種から種へいのちをつなぐ固定種野菜を、無肥料自然栽培でつくっています。
忠幸さんは、2013年に60歳で定年退職し、ときがわ町の農地バンク制度を利用し、農地を借りて農業を始めました。
実は、定年前は、いま農民連本部の事務所(東京都板橋区熊野町)がある場所に建っていた病体生理研究所(現在は移転)で働いていました。56歳まで病体生理研究所に勤務し、その後、60歳の定年まで関連会社に出向していました。
農業を始めたきっかけは、2011年10月に当時購読していた新聞「農民」で紹介されていた本『タネが危ない』(野口勲著)を目にし、それを読んでからです。
著者の野口さんは、埼玉県飯能市で種苗店を営み、在来種・固定種にこだわった種を販売しています。
固定種・在来種の大切さを説くこの本に“感化”され、農家になることを決意。そのまま職場に嘱託として残るという選択肢もありましたが、「農業をやるんだったら、元気な今しかない」と一念発起しました。
東京都清瀬市の自宅から車で“通勤”しています。現在の作付面積は、約30アール。八町きゅうり、南部一郎カボチャ、アロイトマト、飛騨かぼちゃ、平戸にんにく、埼玉青大丸ナスなど種類が豊富です。
始めてから、苦労の連続でしたが、徐々に収量も増えてきました。しかし、畑によって育ち方が違ったり、ハクビシンに作物が全部食べられてしまうことも。これから暑くなれば雑草とのたたかいです。しかし、それでも無肥料自然栽培にこだわるのは、「植物本来の力を引き出し、野菜本来の風味を味わってほしい」という願いがあるからです。ブログもほぼ毎日更新し、固定種野菜の成長を発信しています。
いまは、路地販売と固定客への宅配。路地では、お客さんに説明しながら販売しています。当面の目標は、黒字化をめざし、さらに収量をあげ、販路の拡大を図ること。「固定種野菜の存在を多くの人に知ってもらいたい」という信念は揺らぎません。
(新聞「農民」2017.6.19付)
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